中村てつじ「日本再構築」ブログ

中村てつじが詳しく説明いたします!! 日常活動のブログと分けました!

クラウディングアウトのしくみ

クラウディングアウトという現象について考えてみよう。

クラウディングアウトとは、広辞苑によれば「政府の公債増発が民間の資金重要と競合して金融市場を逼迫させ、金利の高騰を招いて民間企業の資金調達が締め出されること。」と定義されている。

これはどのようなメカニズムで起こるのだろうか。

まず政府が国債(公債)を増発する。
これにより、政府は得たマネーを使って政府の支出を拡大する。

その支払の決済として、政府が(公債発行によって得た)マネーを民間に流す。この分のマネーは民間が保有するマネーが単純に増えるという結果になるので、マネーストックは増える。

マネーストックが増えるので、物価が上昇する可能性が生まれる。(貨幣数量説の通り)

物価が上昇した場合には、中央銀行が金融の引き締めを行う結果、金利を上げるため、銀行による融資が抑制され、民間企業がお金を借りにくくなる。

以上がクラウディングアウトのメカニズムだと考えられる。

従来の通説的説明では、国債発行+政府支出増によるマネーストック増をハッキリと意識していないために物価が上がらない場合にもクラウディングアウトが起こるかのような曖昧な説明になっていると思われる。

上記の説明では、マネーストックが増えても、分配が不十分でマネーの所有者が偏在するようなケースでは物価は上昇しないこともありうる。

物価が上昇しないケースでは、中央銀行は金融引き締めを行わないので、金利は上がらず、銀行による融資姿勢には変化がないことになる。ただ、その場合も、そもそも(物価が上昇しないような不況下においては)銀行による融資姿勢は消極的なので、新規の融資は抑制され、信用創造の第1の経路でのマネーストック増は期待できないということになる。

このようにクラウディングアウトは起こっていないけれども、実際上は融資がなされないために、クラウディングアウトが起こっていると解釈する人が出てくるという点が、不況の場合にクラウディングアウトの理解をしにくくしている原因になっているとも思われる。

なぜマネーストックの上限が法定準備率で決まると考えているのだろう?

なぜ多くの経済学者はマネーストックの上限が法定準備率で決まっていると考えているのだろうか… という疑問が尽きませんでした。今日は、出張で東京に居るのですが、ふと空港に向かうバスの中で気づきました。今日は、そのことを記事にしたいと思います。

先日のブログにも書いたように、多くの経済学者は、

銀行が日本銀行に預けている日銀当座預金の額が先ず決まり
→それに法定準備率(の逆数)をかけて(法定準備率で割って)
マネーストックの上限が決まる=信用創造の制限になっている

という考え方をしています。

しかし、実際には、

融資など銀行が行う「預金設定」の結果、マネーストックの額が決まる
→それに法定準備率をかけて
→日銀当預預金(の最低額)が決まる

という流れで日銀当座預金の額が決まります。

そのため、日銀当座預金を人為的に増やしてもマネーストックが連動して自動的に増えるということはなく、必要以上の当座預金が日銀当座預金口座に積み上がるという、いわゆる「ブタ積み」という現象が生じます。(マネーストックの量は、貸し出しか、国債の発行+政府支出増でしか増えませんのでね。)

それでは、銀行が自行の設定している預金総額では、日銀に預けている当座預金の額が不足するような場合にはどうするのか、というと

1.まずは短期無担保市場で日銀当座預金を他の銀行から借りる
2.手持ちの日銀当座預金を増やしたい場合には、持っている日本国債を市場で売って日銀当座預金を増やす(他の銀行から国債の代金を日銀当座預金口座に振り込んでもらう)

という方法で各銀行は法定準備率に見合う日銀当座預金を確保します。

つまり、財務状況が普通であれば他の銀行が融通してくれますし、融通してくれた金額がある程度まとまったら国債を売って返せばいいのです。

そうか、と思ったのは、

昔は、金本位制だったので、元金になるのが金(ゴールド)であり、今のように簡単には元金を調達することができなかったという事実

に気づいたからでした。

戦後もブレトンウッズ体制の下で、各国通貨とドルとのレートは固定化され、ドルは金と交換可能でした。アメリカの中央銀行保有する金(ゴールド)の量によりドルのマネーストックの上限は規定されているような状況だったと思われます。

そのため、レートが固定されている各国の通貨も、間接的にアメリカが保有する金(ゴールド)の量によって制約を受けるという理論を経済学者の皆さんが採用されたのは理解できるような気もします。

まあ、経済成長や貿易収支が各国によって違いますし、その数字も毎年変わります。そのような中で金(ゴールド)を中心に通貨のレートを固定するということがそもそも無理な話だったということです。そこで、1971年のニクソンショックに繋がったわけです。

ニクソンショックの後は、完全に通貨の価値と金(ゴールド)の保有量は切り離されましたので、通貨の流通量のコントロール中央銀行当座預金とその国の通貨建ての国債で行われることになりました。

だから、今の時代は、かつての金(ゴールド)の保有量で制約を受ける時代とは違う理論構成が必要になったのだと思います。

ちなみに今も必要以上の日銀当座預金が積み上がっていますが、これは、法定準備率によって義務づけられている日銀当座預金の額を超えるもの(これを超過準備と言います)には基本的に0.1%の金利が付いているからです。

この部分の日銀当座預金を使って国債を買っても、国債金利の方が安いので損をしてしまいます。だから、日銀当座預金口座に積まれたままになっているのです。

順を追って理解すれば簡単な話なのですが、なかなか広まらないですね。

信用創造の第2経路についての文献

(2017/01/12追加)

先日のブログで信用創造の第2経路についての文献がほとんどないと書いたところ、読者の方から以下の御紹介をいただきました。私が調べきれなかっただけでした。ここに訂正致します。

以下、御紹介いただいた内容です。

        • -

1.建部正義中央大学教授

国債問題と内生的貨幣供給理論」

http://ir.c.chuo-u.ac.jp/repository/search/item/md/-/p/5721/
(引用開始)

つまり、こういう次第である。すなわち、①銀行が国債(新発債)を購入すると、銀行保有の日銀当座預金は、政府が開設する日銀当座預金勘定に振り替えられる。

②政府は、たとえば公共事業の受注にあたり、請負企業に政府小切手によってその代金を支払う、

③企業は、政府小切手を自己の取引銀行に持ち込み、代金の取立を依頼する、

④取立を依頼された銀行は、それに相当する金額を企業の口座に記帳する(ここで新たな民間預金が生まれる)と同時に、代金の取立を日本銀行に依頼する、

⑤この結果、政府保有の日銀当座預金(これは国債の銀行への売却によって入手されたものである)が、銀行が開設する日銀当座預金勘定へ振り替えられる。

⑥銀行はもどってきた日銀当座預金でふたたび国債を(新発債)を購入することができる、

⑦したがって、銀行の国債消化ないし購入能力は、日本銀行による銀行にたいする当座預金の供給の仕振りによって規定されているのだ、と。

(引用終了)


2.近廣昌志愛媛大学講師

国債発行の市中消化に関する考察」『企業研究』第15号,中央大学企業研究所、2009年


3.山口義行立教大学教授

書籍:『山口義行の”ホント”の経済』

(引用開始)

「政府の債務残高が国民の金融資産残高にだんだん近づいてきている。だから財政破たんは間近だ」という主張は正しいのか

山口 こういう説をとなえている人たちの頭からは、大事なことが忘れ去られている。それは、「政府債務が増加すると、それに応じて国民の金融資産も増加する」のだという事実。

柳田 えっ、そうなんですか。

山口 たとえば、政府が一〇兆円の国債を新たに発行して銀行に買ってもらったとしよう。そうして手に入れた一〇兆円を政府が財政支出すれば、その一〇兆円は国民(企業や個人)の手に渡る。国民はそれを銀行に預金するよね。それで一〇兆円が再び銀行の手元に戻ってくるんだけど、このように一〇兆円の資金が一回りすると政府債務が一〇兆円増えるとともに「預金」という国民の金融資産も一〇兆円増える。

柳田 そのとおりですね。

(引用終了)


4.堀内昭義元東京大学教授

書籍:『金融論』

(引用開始)

p214〜

この表によると、中央銀行貸借対照表が全く変化しないにもかかわらず、民間部門の保有する銀行預金は増加している。つまり国債の民間銀行引受によって、マネーサプライは増加するという結論が得られる。

(引用終了)


5.日銀HP内にある報告書

「金融研究会における「国債に関する諸問題の理論的検討」の討議結果」

(引用開始)

p76

市中消化の場合、個人消化はマネーサプライに変化をもたらさない。一方銀行消化では、市中銀行の段階で国債保有と預金が同額増加するが、現金準備が増加しないので過少準備の状態となり、本来ならば銀行は信用供与を削減しなければならないことになる。しかし、日本の市中銀行はクレジット・ベースの観念が薄く、また金利機能も十分働いていないので、市中銀行が信用供与を削減するという自律的調整力は弱く、日銀借入への追加需要をひきおこしやすい。これに対し、ハイパワード・マネーの供給を拒否すること(短期的なハイパワード・マネーのコントロール)には限度があり、この結果マネーサプライの増加につながり易いことが認識された。

(引用終了)


6.中村てつじ元参議院議員
ブログ『中村てつじの「日本再構築」』
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20130907

(引用開始)

このように、「国債の発行(引受)+政府支出」の過程を見れば、日銀当座預金の額は、全体を通じて10兆円で変わりません。つまり、国債を発行しても、結局、政府支出により銀行にお金が戻ってくるので、マネタリーベースの額は一定だということがわかります。

銀行全体の資産としては、日銀当座預金10兆円の他に、国債1兆円が増えていることがわかります。銀行全体の負債としては、資産の国債1兆円にバランスする形で、民間に対する預金が増えていることがわかります。

このように、政府が1兆円債務を増やしている分だけ、民間が持つ預金の量が1兆円増えているということがわかります。つまり、マネーストックの量が増えています。

(引用終了)


7.大和総研レポート 資本市場調査部 土屋貴裕
「銀行の国債保有が預金を増やす」
http://www.dir.co.jp/research/report/capital-mkt/12031501capital-mkt.html


8.五十嵐敬喜法政大学教授
http://www.murc.jp/thinktank/rc/column/igarashi/column/igarashi120419

(引用開始)

この批判は、別の観点からも補強される。マクロ的に見ると、銀行は運用先のない預金を国債に投資しているのではない。事実は、銀行が国債を購入するから預金が増えるのである。これは、銀行が持つ信用創造と呼ばれる機能の一部だ。銀行が資産である貸出や証券保有を増やすこと(原因)によって、負債である預金が増加する(結果)というものだ(注)。

(引用終了)


9.「金融政策と日本経済」
1993年3月
吉川 洋(経済企画庁経済研究所客員主任研究官、東京大学経済学部教授)
堀 雅博( 同 研究官付)
堀 宣昭( 同 研究官付)
井村 浩之( 同 委嘱調査員、東洋信託銀行
渡辺 俊生( 同 委嘱調査員、東邦生命保険)
竹田 陽介( 同 部外協力者、東京大学大学院)

http://www.esri.go.jp/jp/archive/bun/bun128/bun128.html

(引用開始)

p134

しかし銀行部門が政府から直接国債を購入したとき(つまり銀行が政府の国債発行を引き受けた時)には、銀行部門のバランスシート上では、国債保有残高の増加と同じ額だけの準備が減少し、一方日銀のバランスシート上で同額の政府預金の増大がみられることになる(図Ⅶー6)。つまり銀行による国債の購入という行為にかぎれば、信用創造は行われていない。したがってマネー・サプライはその時点では未だ増大しない。

実際に銀行預金が拡大するのは、政府が財政支出を行った時である。政府から民間部門への払込によって銀行預金が拡大し、決済の段階で政府預金が減少し、銀行部門の準備預金が回復することになる。現実には準備率というアンカーが存在するわけだが、後で見るように、日銀が追加的に銀行準備を供給したり、準備率を引き下げることによって政府支出は最終的にファイナンスされることになる。

(引用終了)


10.「マネー・サプライの増加について」※おそらく日銀の資料
http://www3.boj.or.jp/josa/past_release/chosa197302a.pdf

(引用開始)

一般に広義マネー・サプライの変動要因は、次の三つである。
(1)要求払預金と定期性預金を供給しあるいは取り扱う金融機関が、企業、個人などのその金融機関以外の民間部門に対する信用を増減(△)させた場合(対民間信用による供給)。

(2)その金融機関や日本銀行国債引受け、償還(△)などの形で政府に対する信用を増減(△)し、政府がその資金を企業、個人など金融機関以外の民間部門へ支出したり、同部門から引き揚げしたり(△)した場合、および政府がすでに保有している日銀預け金を取りくずして金融機関以外の民間部門へ支出したり、同部門から引き揚げて日銀預け金に積んだ場合(対政府信用による供給)。

(3)企業、個人などその金融機関以外の民間部門が輸出や資本輸入、輸入や資本輸出(△)によって海外と外貨を授(△)受し、この外貨をその金融機関との間で売買(△)した場合(対外資産による供給)。

ここで変動要因について若干注意を要することは、第1に日本銀行の市中金融機関に対する信用供与(貸出<資金貸を含む>、オペ)は、広義マネー・サプライの変動には直接には関係ないこと、第2に金融機関が国債消化、引受けなどの形で政府に対する信用を増減した段階ではなく、政府がそれで得た資金を支出したり、それに要する資金を引き揚げたりした段階で広義マネー・サプライの変動が生ずること(市中金融機関の国債保有増加<日銀買オペ前>と一般財政対民間収支<国債発行を含む>の合計が関係していること)、第3に金融機関が外為会計の売買、貸借を行っても広義マネー・サプライの変動には関係ないことなどである。

(引用終了)


11.「信用創造とマネーサプライ」August 1999
* 杉原茂(経済企画庁経済研究所主任研究官)
* 三平剛(同研究官)
http://www.esri.go.jp/jp/archive/dis/dis087/dis87.html

この論文の、

第2節 バランスシートの動向とマネーサプライ

に次のような記述。

(引用開始)

上で見たように、銀行による国債の引き受けは、それだけ取り出してみればマネーサプライに影響を与えない。しかし、政府がそれによって得た資金で事業を行うならば、財政支出がなされた時点で通貨保有主体への資金フローが生じ、マネーサプライは増大することとなる5。一方、同じく国債発行によってファイナンスされた財政支出でも、国債が法人や個人により購入された場合には、マネーサプライは国債購入時点では減少となり、財政支出を待って最終的には元の水準に戻る6。

(引用終了)


12.「日銀の金融調節とコールレート 他」
* <分析1>日銀の金融調節とコールレート
* <分析2>金融政策の波及経路と政策手段
平成12年11月
<分析1>
細野薫(経済企画庁経済研究所部外協力者、名古屋市立大学助教授)
杉原茂(同 主任研究官)
三平剛(同 研究官)
<分析2>
杉原茂(経済企画庁経済研究所主任研究官)
三平剛(同 研究官)
高橋吾行(同 委嘱調査員、朝日生命保険相互会社)
武田光滋(同 委嘱調査員、東京海上火災保険株式会社)

http://www.esri.go.jp/jp/archive/bun/bun162/bun162.html

この分析2の「金融政策の波及経路と政策手段」に次のような記述。

(引用開始)

上で見たように、銀行による国債の引き受けは、それだけ取り出してみればマネーサプライに影響を与えない。しかし、政府がそれによって得た資金で事業を行うならば、財政支出がなされた時点で通貨保有主体への資金フローが生じ、マネーサプライは増大することとなる19

(引用終了)


13.福田泰雄「国債発行とインフレーション」

https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/bitstream/10086/9295/1/HNkeizai0002901110.pdf

(引用開始)

p139

最終的には、一方の国債増加と他方の財政散布に伴う預金増加とが見合うことになるが

(引用終了)


14.(当時)大蔵省銀行局長、田辺博通氏「金融財政事情1976年1月5日号」

(引用開始)
問題となるのは、国債大量発行の民間金融に及ぼす影響であろう。事実、民間金融が圧迫されるのではないかとの危惧が、一部にはあったようだ。これには、国債が年度の途中で相当多額に追加発行されたということが、影響しているように思う。すなわち、金融機関それぞれが、事前にそうしてた量と比べてはるかに多くなったために、予定が狂ってきた。そして、先行きの不安からある種身構えの状態が起こったのは、確かだった。

しかし、国債が大量に発行されても、不況対策を含めて相当の財政支出が行われているのであり、財政資金はかなりの散布超過になる。しかもそれが、景気刺激の目的で行われているので、金融機関サイドから考えれば、預金の増加になってハネかえってくる。つまり、金融機関全体からみると国債を消化するために民間貸出をカットしなければならぬということにはならない。

先般の準備預金率の引下げや日銀における年末の金融調節、買いオペ等が早め早めに決定されているのは金融機関側のそういった実態のない不安感を取り払おうというものでもある。今後しだいにその実態が明らかになってくれば、総体として資金が縮まらないことが理解されるのではないか。

(中略)

ただ、その場合、物価については常に配慮しなければならない。国債が主として金融機関に消化されるということは、流動性をふくらます要素となる。マネーサプライは、国債が一般の個人に消化される場合とくらべてふえる。

供給力に相当余力があり、経済活動が沈滞している場合はまったく心配はいらないが、―むしろマネーサプライがふえるようにしないといけないけれども、景気が上昇してきた場合には同じ態度をとることはできない。

(引用終了)


15.日本銀行金融研究所『わが国の金融制度』1986年8月

(引用開始)

p474〜475

市中銀行(マネーサプライ供給機関)引受によって国債が発行され、その代り金によって民間非銀行部門に対して財・サービスの購入代金が支払われたとしよう。この場合、国債が発行される第一次段階においては、金融機関は国債保有増となると同時に国債払込代金分だけ準備預金が減少する(銀行準備が国債引受前において均衡状態にあったとすると過少準備が発生)。

この段階では民間非銀行部門の現預金には何ら影響がないから、マネーサプライは動いていない。次に国債代り金が財・サービス購入のために支払われる第2段階においては、財・サービスを提供した民間非銀行部門はその代金を現金ないし銀行預金の形で保有し(すなわち、マネーサプライが増加)、一方銀行ではそうした民間非銀行部門の動きに応じて資産面での準備預金増加と負債面での預金増加が生じている。

結局、第1、第2段階を合わせてみれば、金融機関はその準備を国債引受前の状態まで回復し、一方マネーサプライが国債発行額と同額だけ増加している。つまり準備は不変でマネーサプライだけが増加している。これは若干の過小準備の発生である。

(引用終了)


16.「日銀:調査月報:1976年(昭和51年)増刊 II マネーフローの変化と今次金融緩和の特色」

http://www3.boj.or.jp/josa/past_release/chosa1976zkc.pdf

(引用開始)

しかし何といっても、最も際立った特徴は、対公共部門信用の増加寄与度が高まったことである。国債引受け等を通ずる対政府信用供与は50年中を通じほぼ一貫してマネーサプライの伸びを高める要因となった。

(引用終了)


17.「日本銀行月報:1995年(平成7年)マネーサプライ統計とその変動の分析手法 7月」

http://www3.boj.or.jp/josa/past_release/chosa199507c.pdf

(引用開始)

p76

財政赤字分の国債を通貨発行銀行が保有し、かつ通貨保有主体は財政赤字分だけM2+CDの保有を増加させた場合、通貨発行銀行のB/S上では国債の増加とM2+CDの増加がバランスする。したがって、この場合財政赤字はM2+CDの増加と対応する。

(引用終了)


18.石田定夫(元明治大学教授)「デフレ経済と資金循環―その態様と問題点― [要旨] 証券経済研究 第38号(2002年7月)」

http://www.jsri.or.jp/publish/research/38/38_10.html

(引用開始)

(4)マネーサプライ統計によれば,最近数年間のM+CDの増加は年率23%で,おもに銀行の国債引き受けと対外資産の増加によって賄われた。銀行貸出は純減し,むしろ通貨供給の減少要因となった。およそ経済活動に必要な預金通貨の供給は,銀行の対企業貸出によって行われるのが通常の姿であり,それがおもに銀行の国債引き受けによって行われて,貸出が純減した状況はデフレ局面の特異な動きというほかない。

(引用終了)


19.横山昭雄『真説 経済・金融の仕組み』

(引用開始)

p171〜p172

これに関連して最近の金融情勢報道につき述べておきたい。近年(2008〜2013年)の金融情勢につき、新聞・雑誌の報道では「銀行は、預金は集まるが、貸出先がないのでもっぱら国債を購入している」と伝えられることが多い。確かにミクロの銀行行動としては、そのように見えるし、解釈されもしようが、これをマクロの視点で見ると、全く逆。銀行が国債を買うから、引き受けるから、それよる調達資金が政府によって支払われ、それが預金となって銀行に集まってくる(つまり対政府与信を始発とするMS増現象)、と解するのが正しい。

(引用終了)


20.「量的・質的金融緩和(QQE)下でマネーはどこから生まれ、どこへ消えたか」 2015年04月01日

http://www.keieiken.co.jp/pub/yamamoto/column/column_150401.html

株式会社NTTデータ経営研究所 取締役会長  山本 謙三

(引用開始)

この関係を理解するために、ここでは、まず中央銀行が新規発行国債を引き受ける場合を想定してみよう。この場合、中央銀行による国債引き受けの対価は、政府により財政資金として市中に支払われる。この結果、財政資金の支払いを受けた企業や家計の預金が増える。

 その後、企業や家計がこれを原材料の購入や消費等にあてると、預金は取引相手に移転する。しかし、経済全体でみれば、預金の総量は変わらない。すなわち、新規発行国債中央銀行引き受けは、――中央銀行が別途資金を市中から回収しない限り、――マネーストックをほぼ同額増やすことになる。

 もちろん、現在の日銀は新規発行の国債を引き受けてはいない。国債の引き受けは財政法上原則禁止されている。しかし、日銀は、国債の発行後、比較的早い時点からこれを買オペの対象とし、市中から買入れている。マネーストックに対する影響の観点だけからみれば、新規国債発行相当額の国債買いオペは、引き受けの場合とほぼ同等の効果をもつ。

 日銀は、QQE開始後これまで、新規国債発行相当額の2倍近い国債を市中から買い入れてきた(ネットベース)。したがって、マネーストックは、少なくとも新規国債の発行に見合う金額分増加するのが自然である。事実そうなった。QQE下のマネーストック増加は、日銀による新規国債発行相当額の買いオペの結果といえる。

(引用終了)


21.「日本のクラウディング・アウト」藤川清史名古屋大学大学院教授1986年6月

http://www.gsid.nagoya-u.ac.jp/fujikawa/pdf/others01.pdf#search='%EF%BD%A5+%E5%9B%BD%E5%82%B5%E7%99%BA%E8%A1%8C%E3%81%AF%E3%83%9E%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%92%E5%A2%97%E5%8A%A0%E3%81%95%E3%81%9B%E3%82%8B'


(引用開始)

p7

次に民間金融機関保有の場合、国債発行の段階で民間金融機関は、日銀から信用供与を受け、国債保有すると考える。財政支出の行われた段階で、民間非金融部門から民間金融部門への預金が100増加し、民間金融部門は日銀へ、借入金を返済する 。結果として国債保有を民間からの預金でファイナンスしたことになり、マネーさサプライは100増加する。

(引用終了)


22.加藤出

書籍:『日銀は死んだのか?』

(引用開始)

p65〜

また、第5章で見る高橋是清財政の時のように、国債発行が日銀直接引受で行われるならば、マネーサプライを増加させるイメージはつかみやすいと思われる。しかし、国債発行が市中公募の場合であっても、日銀が資金過不足を均す同調的な金融調節を行えばマネーサプライは増加する。

(引用終了)


23.住友銀行 調査第一部編

書籍:『銀行・金融問題の要点解説』

第2章 マネー・サプライ 国部毅

(引用開始)

p37〜

次に、民間金融機関引受けによって一〇〇の国債が発行される場合についてみますと、国債発行時点では、民間金融機関バランスは資産側で国債が一〇〇増加し、負債側で日銀借入が一〇〇増加します。次に、財政支出がなされた時点では、民間金融機関バランスは負債側で預金が一〇〇増加し、同時に日銀借入が一〇〇減少します。このため、日銀バランスは最終的には国債発行以前と変わらないことになります。

したがって、マネー・サプライへの影響を見てみますと、国債発行と同額だけ預金が増加しているわけです。

(引用終了)

【コラム】2つのマネー

ここで、マネタリーベースとマネーストックの言葉の意味を書いておこう。

マネタリーベースとは、日本銀行が銀行に対して発行するお金の量のことである。具体的には、日本銀等当座預金日本銀行券、貨幣(コイン)の総量を指す。

マネーストックとは、銀行が民間に対して提供しているお金の量のことである。具体的には、預金、日本銀行券、貨幣の総量を指す。

マネタリーベースとマネーストックの差は「信用創造」と呼ばれている。イメージとしては、銀行にとって、日銀当座預金は元金、預金は日銀当預口座を元にして発行しているお金と思って下さればいい。というわけで、銀行にとって日銀当座預金は資産、預金は負債になる。

ヘリコプターマネー

ヘリコプターマネー

追記3:井上智洋著「ヘリコプターマネー」の先進性

このブログでは井上智洋著「ヘリコプターマネー」の記述の中で不十分だと思う点を指摘はしているが、それだからといって読者には決して本書が読むに値しない本だとは思わないでいただきたい。本書は先進性があり、その点は高く評価されるべきだからだ。

どこが先進的なのか。

本書の最大のポイントは、物価と貨幣量の関係を考える場合に、マネーストックと物価の関係を考える必要があると明確に述べている点である。本書のP.136〜138をご覧頂きたい。

「「貨幣量」といっても「マネタリーベース」と「マネーストック」の二つの指標がある」(P.136)

「これら二つの貨幣量の区別は経済学者なら誰でも知っていることだが、それにもかかわらず一体どちらの貨幣量について言及しているのか明確にせずに話が進められることが少なくない」(P.137)

私が指摘している点をたいしたことないと思われる読者もいらっしゃるかも知れないが、私の経験上、まさに経済学者の多くがマネタリーベースとマネーストックを混同して議論していることに混乱の原因があると感じてきた。

その点を経済学者でいらっしゃる井上先生が正面から指摘されている点に、本書の大きな価値がある。

経済学の教科書でも、マネーストックとマネタリーベースを混同している記述は多い。特に、マネタリーベースを増やせば、そのままマネーストックが増えるということを前提にして書かれている。

(【コラム】 マネタリーベース、マネーストック信用創造 言葉の意味)http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20161229#p2

その大きな原因は、従来はマネタリーベースを増やせばマネーストックが増える傾向にあったからである。特に政策金利が高い時には、政策金利を下げる=金融緩和をすれば貸し出しが増え、マネタリーベースもマネーストックも伸びた。

そのため、多くの経済学者がマネタリーベースの量とマネーストックの量に因果関係があると思ったのだろう。ただ、信用創造のメカニズムを押さえると、マネタリーベースを増やしても、そのまま自動的にマネーストックが増えるわけではないことは分かるはずである。両者は今まで相関関係にあっただけで、相関関係が切れる条件も認識すべきだったと私は指摘したい。

なぜ、信用創造のメカニズムはあまり知られていないのか。

原因は私にも分からないが、例えばウィキペディア信用創造の記述を見ても、法定準備率がマネーストック増の制約になっているという記述が見られる。

しかし、現実は法定準備率はマネーストックの量の制約にはならない。(むしろ自己資本比率規制の方がマネーストック量の制約になる。)なぜならば、人為的にマネタリーベースの量を操作する金融政策が行われない限り、マネタリーベースの量は、マネーストックの量に法定準備率をかけた量によって決まるからである。

つまり、

多くの経済学者の認識(この点は井上先生も同じと思われる)
マネタリーベースの量→法定準備率→マネーストックの量(上限)

実際の関係
マネーストックの量→法定準備率→マネタリーベースの量(但し人為的な操作がない場合)

である。

マネタリーベースの量が金融政策によって人為的に増やされる場合には、マネーストックの量に法定準備率をかけても、それ以上のお金が日銀当預口座に積まれてしまい、上記の「実際の関係」は崩れてしまう。

ただ、多くの経済学者の認識は上記のような関係にあるという認識なので、マネタリーベースの量を増やしさえすればマネーストックが増えると思い込んでしまったのだろう。だから、黒田総裁の異次元緩和にも関わらずマネーストックが増えないのかという疑問に陥ってしまう。

信用創造は預金の設定によって行われる。(この点は、このブログでも従来から指摘してきた通り)

第一の経路:貸し出し
銀行が自らの意思で預金の設定を行う

第二の経路:国債の新規発行+政府支出増
銀行の意思に関係なく、政府からの振込によって預金の設定が行われる

という関係にある。

井上本でもP.50で

「本章では、ヘリコプターマネーの具体的な実施形態として政府紙幣「財政ファイナンス」(財政政策と金融政策のコンビネーション)を紹介し、それぞれのもたらす効果について論じる。」

と述べているが、正確には、後者は「国債の新規発行+政府支出増」とでもすべきである。

新規に発行された国債日本銀行が買うかどうかは、信用創造が終わった後(ヘリコプターマネーが配布された後)に、銀行のバランスシートにある国債を日銀当座預金に置きかえるかどうかということにすぎないからである。

井上先生が本書でこのような整理をされたのは、金融緩和政策を御考えの時に財政拡大政策と組み合わされたからだと私は推測する。正面から国債の新規発行+財政拡大がマネーストックを増やすということを認識されていれば、日銀による国債の引き受けはマネーストックが増えた後の話だと気づかれるはずだからである。

そういった意味では、本書は先進性で抜きんでているが、私としては更にもう一歩進んでいただいて、精緻な議論を今後の井上先生に展開していただきたいと希望している。

追記2「ヘリコプターマネー」政府通貨(政府紙幣)について

著作「ヘリコプターマネー」については現行の政府通貨=コインについての詳しい説明も書かれていません。この点については、私が4年前に書いたブログを参考にしていただければ幸いです。

ブログ「政府紙幣を発行するぐらいのであれば正面から国債を発行すればいい理由」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20120718

ヘリコプターマネー

ヘリコプターマネー

追記1「ヘリコプターマネー」:政府通貨=無利息・償還なしの国債

井上先生の「ヘリコプターマネー」については、いろいろな枝葉末節的な批判がなされると思うが、想定されるその一つは、政府通貨を発行すべきという井上先生に対して、「政府通貨と日本銀行券との交換レートをどうするのか?」という問いである。

これに答えるのは難しい。国家が発行する通貨なので、政府通貨の1円=日本銀行発行の1円となるはずである。

ちょっと専門的な話になるが、政府通貨を1円預けると、銀行に預金1円としてカウントされなければ経済は回らない。つまり、銀行に預けた瞬間、政府通貨も日本銀行券も同じ1円の「預金」になってしまう。

また、預金者から政府通貨を引き受けた銀行が政府通貨を日本銀行に預けることもできるようにしなければ、金融システムは混乱する。すると、結局、発行された政府通貨は、日本銀行に吸収されることになる。

その結果、日本銀行バランスシートには、資産の部に政府通貨が蓄積されることになる。しかし、この政府通貨は、政府によって国債と換金されることが義務づけられない限り、無利息・無償還のモノになってしまう。これは政府通貨が無利息・無償還の国債と同じという意味である。

こういうモノが日本銀行バランスシートに紛れてしまうと大変だ。

考えてもみてみよう、無利息、無償還の債券を手渡されて、その経済的評価をどのように考えるか。

いつまで経っても、元本を返してもらえない。
利息も付かない。
こういう債券は無価値である。
つまり評価額がゼロになる。
そうなると、日本銀行バランスシートは大幅に傷んでしまう。

結局、日本銀行保有する政府通貨を使って政府から国債を買えるしくみが法的に作られることになる。いまも日本銀行保有する国債を償還される時に政府から渡される円を使って借換債を政府から購入しているので、日本銀行発行の円では政府から国債が買えて政府通貨では政府から国債が買えないというのは論理的な整合性がとれなくなる。

ということで、金融システムのしくみから見れば、政府通貨という別物を発行しなくても、素直に国債を発行すればいいという話になる。この論点を井上本では書かれていないので、読者は疑問に思うかもしれない。

ヘリコプターマネー

ヘリコプターマネー