(2)パート労働と最低賃金


政治の役割は、大きく分けて、
1.公正公平な市場を作ること
2.市場では解決できない問題について解決する仕組みを作ること
の2つだと分類できます。


今回は、1・2に関係するテーマ、「労働」と最低賃金について書きたいと思います。


今日の新聞でも、労働法の改正により、派遣労働者の労働条件切り下げがなされる方向であることが報じられていました。このまま、労働条件を市場に任せれば、大変なことになります。格差はどんどん広がっていくでしょう。


経済学のイロハにあたるのでしょうが、労働者にとって唯一の商品は労働です。だから、暮らしていくためにはダンピングしてでも売らなくてはいけない(働かなくてはいけない)ということになります。

市場に任せれば、需給のバランスが崩れたときには、給料は際限なく下がっていくことになるでしょう。これでは、人間としての最低限の生活もできなくなります。

そのために、労働法があり、労働については規制をかけることで人間らしい生活を担保するという趣旨で法律が作られています。


しかし、このところの労働法の改正は、労働者の権利をそぐ形でなされてきています。

ここは、おかしいと言わなくてはならない。

私は、この点にこだわりたいのです。


もう実際に、現時点でも、宅配の請負や偽装請負などに見られるように、劣悪な環境で労働をなさっている方々がいらっしゃいます。しかし、精一杯の生活の中で、政治的な主張や取り組みをなさる余裕はありません。「ワーキングプア」と言われるようにもなりました。

結果的に、与党の政治ではその人たちの声が制度に反映できないことになっているのではないかと思います。


私は、フリーターなどのパート労働についても、正社員との均等待遇を実現すべきだと考えます。(民主党は、過去法案も提出しました。)

例えば、奈良県では高卒の初任給を時給で換算すると、898円になるそうです。それならば、高卒のパート労働の最低賃金は、時給898円以上にする。社会保障の一元化の議論についても、そうして初めて、パート労働者にも、正社員並みの社会保障の自己負担を引き受ける前提条件が整います。

今の政治では、パート労働者・民間正社員・公務員の三者について、お互いに反目させる制度を作ることで、分断しています。企業側にとっては、良い構造が拡大しつつあります。


果たして、パート労働の労働環境を整えることは、正社員にとってマイナスなのでしょうか。

パートになれば妻子を養えない給料しかもらえないから、パートにならないように、正社員は必死で働く。過労になる。しかし、それだけ頑張っても、会社がつぶれてしまうこともある。

もし、パートでも社会保障もしっかりあれば、ライフスタイルに合わせて、ある時は正社員で働き、ある時は派遣で働き、ある時はフリーターをする、ということも可能になるでしょう。


人は、自分が幸せになるために、生きている存在であるはずです。

それならば、先に企業が生き残れることがあるべきなのではなく、社会から排除されない人を作ることの方が先にあるべきではないかと思うのです。


私たちの世代は、昔に比べて、正社員比率が低いです。(女性に非典型労働者が多いことも理由でしょうが。)
また、正社員であっても、給料は決して高くない。
このままでは、結婚もできない人がさらにドンドン増えていきます。


私の主張は、今の「切り捨て」の時代の逆を行く主張だと言えます。しかし、切り捨ての手法の先には、殺伐とした未来しかないと思うのです。

あらためて、社会の絆を再生させる手段は何なのか、社会全体で取り組みが必要になってきていると思います。