ハケンの変革(西尾仁秀さん)

(2009/08/15記)


◇ 派遣切りと「ハケンの変革」

地元の県議会議員の紹介で、「ハケンの変革」の西尾仁秀(にしお・ひろひで)さんにお会いしてきました。
http://revolution4haken-3.blogspot.com/


見せていただいた高裁の判決文を読み、このようなことがまかり通っているのか、また、このような事実認定をしながらこのような法的判断をする司法はこれでいいのか、と思いました。

(高裁の判決文については、後日、写しを皆様にお伝えできるようにしたいと思います。)


西尾さんが、マンパワー・ジャパンの派遣により、KCNに派遣されたのは、2005年(平成17年)。長期の雇用という条件で、求人がなされた。

KCNで業務に就いたのは、戸別訪問をしてケーブルテレビの加入を勧誘する営業職。KCNに派遣される際にも、KCNにより派遣業法が禁止している事前面接をされ、長期間の勤務がなされることが条件として確認されている。


しかし、派遣先のKCNでの勤務が始まった後に、事後に派遣元のマンパワー・ジャパンから、「就業条件明示書」や「お仕事明細」が送り付けられ、1ヶ月毎の細切れ有期雇用契約とされた。

派遣元のマンパワー・ジャパンとの契約書はない(西尾さんの話)。


この点、就業条件明示書というのは、契約書ではなく、会社側の一方的な条件を提示したものであるのだから、双方の合意というものではないということは明確だと思います。

しかし、判決では、西尾さんに黙示の合意があったとし、1ヶ月の有期契約を繰り返し、結果的に長期間の勤務になることを会社側は期待していたと判断するのが合理的だとしました。


いやいや。

それは、おかしいでしょう。


それならば、KCNは、そもそも、長期間務められるかという事前面接をしないはず。

また、私もKCNを利用しているので良く分かりますが、「KCNの営業です。」と言われたら、近鉄の資本なので信用します。家の中もすみずみまで見せるでしょうし、どのようなテレビ、インターネット、電話の利用をしているのかをきちんと伝えるだろうと思います。

そのような個人情報を扱う営業の仕事を、KCNが派遣元と1ヶ月の有期雇用しかしていない派遣社員に任せているということを、誰が信用するでしょうか。


◇ 背景にある社会保険料逃れ

なぜ、マンパワー・ジャパンは、募集とは違う、短期での細切れ雇用を連続させるような雇用契約に、事後的に変更させるようなことをするのでしょうか。

社会保険料は労使折半になっています。派遣元の派遣会社は、使用者側の社会保険料を負担したくないために、労働者との雇用契約を2ヶ月以下の短期雇用にしたいという背景があります。


(参考)加入要件
厚生年金・協会健保 2ヶ月+1日以上
雇用保険 1年以上(現在は6ヶ月以上)


派遣先のKCNからは、労働者の労働時間1時間当たりの派遣料(業務料)が派遣元のマンパワー・ジャパンに支払われます。そこには、派遣元が労働者に支払う時給、雇用契約に伴う社会保険料(労使分とも)、消費税が含まれます。


一般論として、派遣元とすれば、この社会保険料の部分を負担しなくて良いのであれば、収益が上がることになります。

マンパワー・ジャパンが、なぜ、このような募集とは違う、短期での細切れ雇用を連続させるような雇用契約に、事後的に変更させるようなことをしたのか。本当の動機は、組織の内部の話なので分かりませんが、社会保険料逃れと考えるのが合理的でしょう。


そして、その背景には、圧倒的な派遣先と派遣元の力の差があります。

派遣先は、派遣元の派遣会社を選ぶことができます。そこで、派遣元との労働者派遣契約においては、派遣料(業務料)を値切ります。また、労働者派遣契約においてはきちんと定められていても、契約の履行においてきちんと払われなくても、今後のことを考えれば、派遣元は派遣先に何も言えないという可能性もあります。


民主党の方針

それでは、民主党は、労働者派遣法について、どのように考えているのか。


民主党は、今年の6月26日に、社民党国民新党と共に、労働者派遣法の改正案を衆議院に提出しました。
http://www.dpj.or.jp/news/?num=16370


また、8月14日の3党共同記者会見「衆議院選挙に当たっての共通政策」でも、同趣旨の内容が盛り込まれています。
http://www.dpj.or.jp/news/?num=16839


6月26日の法案提出の際、民主党サイトではこのように説明されています。
http://www.dpj.or.jp/news/?num=16370

        1. +

法案では、日雇い派遣を禁止。

派遣労働者雇用契約については、雇用契約期間が2カ月以下の労働者派遣を禁止することとした。

また、「2カ月以下の有期雇用契約は解雇予告が適用されない」「健康保険・厚生年金は2カ月以内の有期雇用は適用外」となることなどを考慮し、2カ月以下の雇用契約期間の場合、2カ月に1日を加えた雇用契約期間とみなすこととした。


同時に、直接雇用みなし規定を創設。派遣先が(1)禁止業務で派遣を受け入れた、(2)無許可・無届と知りながら派遣を受け入れた、(3)期間制限を超えて派遣を受け入れた――などの違法行為を行った場合、派遣労働者が派遣先に対して「あなたが私の雇用主です」と「通告できる」とし、派遣先と派遣労働者間に雇用関係が成立する規定を設けた。


また、均等待遇の観点から、「労働者派遣をし、または労働者派遣の役務の提供を受ける場合は、労働者の就業形態にかかわらず、就業の実態に応じ、均等な待遇の確保」が図られるものとした。


さらに、情報公開の重要性を考慮し、「派遣元から派遣労働者、派遣元から派遣先に対する通知義務事項を拡大」や「労働者派遣の受け入れにあたり、派遣先から派遣先労働組合へ通知義務」「いわゆるマージン率を含め事業運営の情報等についてHP等への公開の派遣元への義務づけ」を法案に盛り込むともに、「派遣先での不利益取り扱い禁止」「未払い賃金や社会保険未払いの派遣先の連帯責任」「派遣先への安全衛生教育の義務付け」「派遣労働者の個人情報保護」「派遣労働者所属労働組合と派遣先との団体交渉応諾義務」――など11項目について派遣先責任を強化する内容とした。


専ら派遣に関しては、法人及びその子法人から成る法人グループを「一つの派遣先」とみなし、派遣元は労働者派遣の役務のうち8割を超えて、一つの派遣先に提供してはならないと定めた。


罰則も強化され、現行最高額を300万円から3億円とし、「違法な労働者派遣事業を行った法人に対する罰則」「違法な労働者供給事業を行った法人に対する罰則」それぞれの強化、「派遣先に対する罰則の導入」も法案に盛り込んだ。


それに加え、専門業務を除き製造業派遣を禁止すること、一般労働者派遣事業について26専門業務以外は常用雇用のみとすること、派遣労働者等について、雇用される期間が6月未満であっても、雇用保険の被保険者とすること等、重要な改正も定めた。

        1. +

このように相当な変更をする内容となっています。民主党マニフェストや政策集INDEX2009では、ここまで詳しい内容は書かれていませんが、民主党が3党共同で既に提出した法案なので、選挙後の取り組みも、この法案がベースとなって政策を実現していくことになることには、間違いありません。


◇ 若者はモノではない

私は、いわゆるロスト・ジェネレーションの世代にいるので、40歳以下の若者世代が直面している状況を肌身で感じています。

少子高齢化」と言われますが、まともに給料ももらえない状況で、結婚し、子どもを持つことなんて、できません。


現行の労働者派遣法は、運用次第では、この西尾さんのケースのように、社会保険雇用保険がかけられず、若者をモノ扱いするようなことになってしまいます。


若者はモノではない。


当たり前のことですが、当たり前になっていないのが、日本の悲しい現状です。

8月18日から、衆議院選挙が始まります。若者の皆様にも、きびしく政治家、政党を選んでいただけるように、私も訴えを続けて参ります。


参議院議員 中村てつじ
メール 御意見を賜りますよう、お願いいたします。
m@tezj.jp