マンション建て替え要件:客観要件の復活が必要

(記2010/05/31)


奈良県マンション管理組合の関係者と話をしました。現場の方たちがどのような考え方を持っていらっしゃるのかを聞くためです。その結果、平成14年の区分所有法の改正の際に削除された、マンションの建て替え要件の客観要件(過分費用要件)を、過分費用の内容を明確化した上で、復活するべきではないかと考えるようになりました。


ブログの読者の皆様はご存じのように、私は野党時代、民主党の住宅政策に関わってきました。その理念は、今ある住宅を「資産」として活用できるようにし、国民の生活をより豊かなものにしていこうという点にありました。

その私が、今、法務省の担当者として、内閣府行政刷新会議「規制・制度改革に関する分科会」「グリーンイノベーションWG」(環境・エネルギー分野)の「住宅・土地サブグループ」から問い合わせを受けています。
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/green/0429/agenda.html


しかし、この内容が全く胡散臭い。「グリーンイノベーション」なのに、マンション建て替えにばかり重点が置かれ、既存のマンションをより大切に使っていくというマンションの改修・補修には全く重点が置かれていない主張がなされています。

鳩山総理は、CO2を1990年比25%削減を公約としています。コンクリート建造物を建て替える時に排出されるCO2(二酸化炭素)のことを考えれば、「グリーンイノベーション」を目指すのであれば、マンションは建て替えでなく改修・補修という選択肢になることは明らかです。


平成14年のマンション建て替え促進法の質疑の際も、民主党の阿久津代議士をはじめ、民主党の多くの議員は、マンションは建て替えに偏るのではなく、むしろ基本はマンションの再生に置くべきだと主張していました。

政権交代を果たしたからには、今あるマンションをより価値あるものに変えていく「マンション再生」に政策転換しなければならないことも、過去の民主党国会議員が主張していたことを考えれば、明らかなことです。


平成14年の区分所有法の改正の際には、建て替えに比べて補修に過分の費用がかかる場合という客観的要件(過分費用要件)が削除されました。

この法律の改正により、マンション建て替え決議の際に、建て替えと補修とどれだけ費用対効果が違うのかという客観的な検証ができない状態になってしまいました。


平成14年改正の時にも、民間識者からは、(1)既存のマンションを建て替えてもう一度現行基準で建て直した場合のコストと(2)既存のマンションを改修して現行基準を満たすまで改修した場合のコストを比較し、(2)が(1)の2分の1以上であれば、過分費用とみなす、過分費用要件の明確化が主張されていました。


当時から8年経ってみて、あらためてこのような主張に目を向けるべきではないかと考えるようになりました。


私もこの案件に関わって、あらためてコンクリート建造物の改修・補修について書かれている資料を読み込みました。阪神大震災の際に建て替えられたマンションも、多くは補修・改修で十分に対応できた、また、そのことにより、二重ローンの問題なども避けられたという指摘がなされていました。

多くの管理組合で、正しい情報が共有されず、きちんとした費用対効果の比較がなされなかったことが背景としてありました。


国がやるべきことは、建て替え要件の緩和ではなく、正確な費用対効果の情報提供なのだということが分かりました。しかし、旧政権の規制改革会議の流れを組む民間委員は、「グリーンイノベーション」の名の下にCO2排出をさらに加速させるマンションの建て替え促進政策の継続を望んでいます。

「政治主導」と言われるからには、この点について内閣府の政務三役から、きちんとした説明を頂き、本当の意味で「国民の生活が第一」のマンション政策を実現していきたいと思います。