中村てつじ「日本再構築」ブログ

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査証発給業務の民間委託@在タイ王国日本大使館

(記2010/08/19)


8月16日。法務大臣政務官としての海外出張で最後の日程となったのが、在タイ王国日本大使館の視察。「何だ、身内のものを見てどうするんだ」と思われるかも知れません。確かに、日本の行政機関が行っている業務を海外出張で見るのは意味がないと思われるかも知れません。ただ、今回訪問をしたのは、大使館の査証(ビザ)発給業務を民間委託している現場だったのです。

行った現場の名前は、日本査証申請センター「JVAC」(ジェイヴァック:Japan Visa Application Center)です。つい2週間前、8月4日から本格的な業務を開始しました。場所は大使館から少し離れたところにあり、委託を受けた民間企業が利用の便の良いところを借り上げて、申請場所として設けています。

参考:在タイ日本国大使館「日本査証申請センター(JVAC)による査証申請・交付業務の開始」(PDF)
http://www.th.emb-japan.go.jp/jp/consular/jvac.pdf


査証(ビザ)は、タイ国民が日本に来る時に必要になるものです。日本大使館に申請をして審査を受け、審査を通れば交付されることになります。査証発給業務で問題になっていたのは、必ずしも公権力が行わなくても良い部分=申請受付部分+査証交付部分の負担が重くなってきたということです。

より詳しく言えば、各国の経済発展により、日本の観光で来る人が増えています。先進国同士のように査証免除となれば良いのですが、先進国以外の国では不法労働等の問題があり、なかなか査証免除ということにはなりません。また、経済のグローバル化により、観光以外の分野においても日本に来る途上国の人たちは増えています。

その結果、例えば、タイで発効される日本国の査証は、2005年が10万8000件だったのに、2009年には15万2000件と、4年で1.5倍になっています。(世界全体では、上海の26万件、北京の在中国大使館の24万件に続いて第3位。)


そこで、各国が行っているのが、査証発給業務の申請受付部分と交付部分の民間委託です。アジア地域では、VFS(Visa査証 Facilitation簡易化 Serviceサービス)という会社のほぼ独占状態になっています。

VFSは、年間700万件の査証発給業務の委託を行っているそうです。日本全体での査証発給が年間140万件ですので、いかに多くの件数を受託しているか分かると思います。民間委託の優れているところは民間が行うことでローカルの人材を使うのがうまく、ローコストで良いサービスが提供できているというところだそうです。


日本も、世界にある日本国大使館の中で初めて、この在タイ日本大使館がこの民間委託をパイロットケースとして取り組むことになりました。

タイでも、他のアジア諸国と同じようにVFSの独占状態になっているので、今回の日本国との委託契約はVFSとの随意契約となっています。そこで問題になるのが、発行手数料です。


この件を外務省本省の外国人課長として取り組んできたこともある、松永一義(まつなが・かずよし)参事官@在タイ日本大使館に尋ねました。「委託手数料という形で、日本政府からいくら払われるのか」→「実は日本政府から手数料は払われていません」との回答。
そこで「どのようにしてVFSは収入を得ているのか」→「大使館に支払われる申請手数料とは別に、VFSに払われる発行手数料がVFSの収入になります」とのこと。


つまり、タイ国民からすれば、査証発給業務の民間委託によってVFSに払われる発行手数料の分、査証申請に伴う手数料が高くなるということです。「この点に問題はないのか」と尋ねたところ、「各国とも査証発給の増大に苦慮していて、審査の充実のためにはそれ以外の部分を民間委託せざるをえません。その発行手数料の部分については、おおむね理解して頂いているようです」ということなのです。

そこで、タイ国民からVFSに払われる発行手数料についても、他の国の査証が約500〜535バーツであることから、日本の査証についても535バーツという手数料の額になったということです。(この額は、日本大使館とVFSとの話し合いで決まります。)(1バーツ=約2.8円)


民間委託により、JVACの地方センターも設けることができるようになりました。窓口業務をタイポストに再委託することにより、バンコクに来なくても全国6箇所の地方センターで申請ができるように。タイポスト自身にはマネジメントをする能力がないので、再委託の形を取っているということです。


今回の事業は、パイロットケースということで単年度の契約になっています。ただ、VFSが投資をしている内装などを見ると、恒常的な委託を前提としているとしか思えません。まあ、なかなか対抗できる業者も現時点ではないのでしょうが…。


また、窓口数も民間委託によって増えました。大使館では8箇所も受けられていた窓口は22箇所に。これにより、長蛇の列が出来ていたものが、かなり緩和される見込みです。

特に短期ビザの場合には、大使館では午前中までしか受付をしていなかったものが、VFSの窓口では昼休みもなく8時30分〜17時30分までとなりました。

実際、私が視察に行ったのは17時頃だったのですが、もうほとんど人は来ていなくて閑散としていました。まだ、利用時間が延びたことが広まっていないのでしょう。利便性が向上したので、これから申請者数もさらに伸びていくのではないかと思われます。


また、民間委託に伴って、郵送での交付サービスも始まりました。追加料金として125バーツを追加することで、窓口に取りに来ないでも自宅までパスポートと査証を送ってくれるという。これもタイポストとの提携をしているので可能となっているのでしょう。


初めての民間委託ということでもあり、色々と問題はあるかも知れませんが、今まで官が独占していたものが民間に開かれ、結果として利用者や納税者に便益を与えるものであれば、対象範囲を拡大していけると思います。

始まったばかりの取り組みであり、なかなかすぐには評価できませんが、より良い形で発展していけば良いなと思いました。