入管行政の大改革「新しい公共」日弁連との合意


今日(2010/09/10)、千葉大臣は法務省日弁連(日本弁護士連合会)が入管行政(出入国管理行政)が行う収容にまつわる諸問題について、協議する場を持つこと等の合意をしたと公表しました。

今日は村木さんの無罪判決などがあったので全く報道されていませんが、日本の入管行政にとっては大きな改革です。千葉大臣の大きな実績なので、ブログの記事としてまとめておくことにしました。(今日の法務省政務三役会議で私がこの事実をネットで説明することは了解されています。)


一番大きな点は、被収容者に対する弁護士による無料法律相談を行うということです。

茨城県牛久市の「東日本入国管理センター」については、9月30日、関東弁護士連合会と東京3弁護士会が臨時法律相談を実施します。

大阪府茨木市の「西日本入国管理センター」については、大阪弁護士会による電話法律相談の実施に向けて調整中です。時間をおかずにできるだけ早く実施したいです。


そして、その法律相談を契機にして、弁護士が被収容者の代理人になったような場合に、その弁護士に、送還予定時期を知らせることにしました。この点も大きな変化です。

自民党政権時代から)今までは、送還予定時期を公開するということは考えられないことでした。それは逃亡の可能性がある等が理由でした。ある意味で弁護士や弁護士会を信じていなかったということでしょう。

弁護士が代理人になっているような場合には、その訴訟活動等に関する判断をするためには送還予定時期を知ることは必要条件です。しかし、知らされれば弁護士側にも責任が生じます。この点について折り合いがついたのは良かったです。


収容されている外国人の権利の主張をより尊重する。手続きを透明化して適法・適正な退去強制手続きをさらに進める。その2つの目的のために「新しい公共」の一つの形として、官と民が協力して一層適正妥当な入管行政に向けて取り組むことにした、ということです。

具体的な運用の部分では、弁護士が関与して手続的な人権保障が厚くなったため、長期収容者の仮放免についても認めやすくなると思われます。

被収容者の仮放免については、その運営が不透明であるとNGOなどから批判されていました。本来、早期に送還するのが入管の役割であり、そもそも長期に収容されることは法の建て付けからしても想定されていません。しかし、難民申請等の案件などでは争訟が長期化し、退去強制令書が発布されてから長期間送還できないというケースも増えてきました。


入管行政からすれば、早く帰ってもらえる外国人には収容をして早く帰ってもらうことが必要である一方、難民申請中の外国人など早く帰したくても帰せない外国人が居ることも事実です。ただ制度を悪用する外国人も出てくることが予想されることから、なかなか仮放免などを開いていくことができませんでした。

今回、日弁連に協力を頂くことで、権利保護の担い手である弁護士が関与する方法を採れるようになりました。入管から弁護士に情報を提供するとともに、その弁護士が関与する仮放免の申請等があれば保証金を下げることもできるようになります。

誤解を恐れずに簡単に言えば、弁護士が関与することによって、収容して早く帰ってもらう外国人と訴訟などを争いつつ日本にある程度残っていてもいい外国人を仕分ける効果があります。これは、入管行政にとってもメリットがあります。


このような入管行政の方針変更は、法務省入国管理局の総務課長と警備課長(前審判課長)の2人の働きが大きかったです。2人とも検事出身です。外部出身の担当者だからこそ今までの経緯に縛られることなく改革に取り組めるような場合もあります。法務省といえば検察支配人事と批判されることもありますが、このようなケースを経験すると良い面もあるなと思います。

今日の村木訴訟の判決などを契機にして、これから検察を巡る国民的な議論が予想されます。検察の自浄作用を見守りつつ、私自身は検察庁を含めて法務省全体の現場の人たちの志気が落ちることの無いように取り組みを続けていきたいです。