震災復興財源をどのように調達すべきか


民主党の税制改革PT・財務部門・総務部門の合同会議に出席した。テーマは東北関東大震災に対する対応。朝8時30分からの会議では取りまとまらず、14時から2回目の会議が行われた。

復興財源については既存経費の削減を、というのが当初の案であった。それに対しては、多くの議員から異論が出た。「100兆円の国債を発行して、それを日銀が直接に引き受けたらいい」という意見まで出た。


私は日銀の直接引き受けには反対しているが、そのような直接的な方法でなくても国債は消化できると考えているから。直接引き受けでは、日銀が政府から直接に国債を買うので、市場メカニズムが働かなくなりかねず、市場の信頼を一挙に失うリスクがある。

実際のところ、現状は、直接引き受けに近い状態になっている。銀行はこのところ、融資は減り続け、その分、国債を購入している。また、日銀は金融緩和で銀行に資金を流し、銀行がそのお金で国債を買うという流れになっている。現に十分に国債は消化できていて長期金利も上がっていない。いきなり直接引き受けに舵を切る必要性もない。

蛇足的に言えば、長期金利が上がることも、高齢者が金融資産を多く持っている日本においては、経済的には悪いことではない。長期金利が上がれば家計所得が増える。おじいちゃん・おばあちゃんの小遣いが増えるので、孫にモノも買ってやれるだろう。元本は切り崩せないが、金利分は思いっきり使えるというのが高齢者の心理だろう。

もっとも長期金利が上がれば企業淘汰が進んでしまう。この部分については、新産業の育成や雇用対策・失業対策の政策が必要になる。


話を元に戻す。現在の問題は、「財政健全化」という呪文をみんなが唱えていることだ。以前にもブログで書いた通り、日本の対外純資産の額は270兆円もある。対外資産が550兆円あり、対外負債が280兆円あるので、差し引き270兆円あるということなのだが、この意味が国会議員の中であまり共有されているとは思えない。

仮にこの対外資産550兆円を処分して、その分の価値を日本に持って帰るとすれば、対外資産は外貨建てのために、外貨を売って円を買うことになる。当然、円高になる。つまり、日本の対外純資産が270兆円もあるということは、常に円高に向かう圧力が「円」という通貨にかかっているということになる。


昨年の夏頃、「日本がギリシャになる」というトンデモない評価をした政治家が居た。私は「そんなことはありえない」と申し上げてきた。なぜギリシャと日本が違うのかといえば、ギリシャには他国からお金を借りなければ自国の財政を維持できないという事情があったからである。その背景には経常収支の赤字がある。これに対し日本は何十年も経常収支は黒字なので、毎年、その分は海外への投資に回り、資本収支は常に赤字(つまり対外資産は増える)で来ているわけである。

簡単に言えば、日本という国は(より厳密に言うとすれば「「円」を経済圏とする地域に住む人間と企業によって構成される集団は」)、他国に多額のお金を貸しているということだ。今国債は日本国内で消化されているが、他の国と同じように他国の人たちに国債を買われたとしても簡単に「返すことができない」という状態が来るわけではない。


この経常収支と財政の関係について、あまり議論にならないのが、民主党の党内会議でも私が歯がゆく思う点である。


読者には議論がアサッテの方向に向いていると思われるかも知れない。くどくどと書いているのは、復興のために国債を発行するということは、今取るべき政策だというを言いたかったから。復興のために公共事業をすることは、国力を増大させることである。つまり国債という負債に見合う資産が国にもたらされる。

1971年のニクソンショック以来、各国の通貨はその国の国力を表すモノになったのだから、投資分の国力が増えれば他の国からの取り付け騒ぎにはならない。


私は、当初予算とは別に、この補正予算では数十兆円の単位で東北・北関東地域に公共事業をすれば良いと考えている。そして生活が復興すれば、経済も好転するので、そのときに増税を考えれば良いのである。

単純なことだと思うのだけれども、なかなか理解されない。
どういう理屈でおかしいと思われているのだろうか…。