TPPって何が問題?


民主党でTPPに対する方針がとりまとめられる段階に入ってきました。今日は15時30分から17時まで第16回の「経済連携PT」がありました。来週月曜日には、17時から第17回のPTがなされることになりました。


「TPPって何? 何が問題なの? 中村さんは賛成なの?」と聞かれます。私は、TPPには問題が多いと思っています。でも、より問題なのは、賛成派の人たちが根拠としていらっしゃることが、マクロ経済的に見て根拠となっていないことに、政府を始め、みんな気づいていらっしゃらないことです。


賛成派は、「新興国内需として取り込むため」と仰っています。今まで、新興国が成長をしてきたのは、アメリカやヨーロッパの先進国が自分たちの国際収支を赤字にしてでも、新興国(途上国)からモノを買ってきたからです。

今は、アメリカもヨーロッパもそんなこともうできません。国際収支を赤字にしていると、他の国から投資してもらわなくては国債を発行できません。そのうちに、いきづまります。今のヨーロッパの「ソブリンリスク」というのは、まさに、いきづまってきて、金融危機の一歩手前にきているということです。


「アメリカやヨーロッパが買えなくなったら、どうなるの?」と思われるでしょう。途上国は、先進国が買ってくれなくなったら、自分のところの国民が買うしかないのですが、十分に賃金が上がっていないので、先進国に買ってもらっていたような製品は買えないわけです。

途上国(新興国)は、先進国に買ってもらって(=輸出を増やして)、そのお金で先進国やほかの途上国からモノを買う(=輸入を増やす)という順番なんですね。

輸出ができて、経済成長して、賃金が上がって、労働者がモノを買って、輸入が増えるっていう関係にあるわけです。


アメリカやヨーロッパがダメになっている時に、「あいつはいつも儲けているのに、ぜんぜん、ほかの国のモノを買おうとしない」と言われている先進国があるんです。どこか分かりますか?

そうです。日本です。

日本は、戦後、経常収支の黒字を貯め込み続けて来ました。その結果、日本居住者が持っている対外債権は563兆円。外国居住者が日本に持っている資産が312兆円。さしひき、251兆円も純資産を貯め込んでいる国が日本っていうこと。

日本は、1971年のニクソンショック以降も、40年間連続して経常収支が黒字。最近20年間は、対外純資産の額が、世界一になっています。

そんな国が途上国からモノを買わなかったら、途上国の経済成長なんてありえないわけです。


問題は、日本人自身が自分たちの国がそんな凄い国であることの自覚がないことです。「アジアを内需に」と言うためには、自分たちがアジアからモノを買って、そのお金で経済成長してもらって、日本の良いモノを買ってもらえるぐらいに経済力をつけてもらわないといけないのだけど、まだまだ日本はアジアからモノを買えてないわけです。

例えると、日本は、「カネはいっぱい持っているけど、使わない金持ち」のようなものです。途上国からすると、お金をたくさん持っている日本が使ってくれないと、自分のところにお金が回ってこないから、使って欲しいと思っているんです。


だから、日本は内需拡大をして、アジアからモノを買わないと「アジアを内需に」なんてことはできないわけです。こういう基本的なことを、国会議員になっている人でも、分かっていらっしゃらないのではないかなぁ、と思うのです。


そういう意味では、「TPP交渉に参加する」ってことは、「日本は今までの経常黒字国をあらためて、他の国のモノをもっと買う国になりますよ」という意思表示なんです。

なのに、そんなことはほとんど言われてなくて、何となくTPPに参加すれば、日本の経済にとってプラスになると思われているのです。


それでは、どうしたら日本がもっと「買う」国になれるのでしょう?

私がいつも主張しているのは、「日本の労働者への労働分配率」を上げること。そうでなければ、日本の内需は増えませんし、内需が増えなかったら輸入も増えないので、途上国の成長を促せないということになります。結局、途上国の成長がなければ、高い日本の製品は買ってもらえないわけですから、日本が困ることになるのです。

ただ、この点は、日本の経済団体や経営者の方々が分かっていらっしゃらないのか、派遣切りや労働条件の切り下げをしているので、どんどん可処分所得が減って、内需が低迷しているわけです。

本末転倒していますよね〜。


「日本の労働者は、団結せよ」「輸出企業の労働組合は、自分たちの雇用を守るために労働分配率を上げさせ、給料を上げてもらって消費により、内需を拡大させる方向に持っていくべき」と言っているのですが、なかなか伝わらないのですよね。

製造業の輸出企業に勤めているサラリーマンの人たちには、自分たちがどういう目に遭わされているのか、よく知っていただきたいです。

日本の労働者はもっともっと豊かになれる。
僕は、そう思います。