中村てつじ「日本再構築」ブログ

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閣議決定された消費税増税法案の論点(第1稿)


残念ながらマスコミでは民主党内での激しい議論の内容は伝えられていません。
そこで、「消費税増税法案の論点(第1稿)」をアップしました。更に加筆・修正を加えていく予定です。
http://firestorage.jp/download/2aa311f21e825ae673840acb055e7557c9f56e7c


「消費税増税法案の論点(第1稿)」のテキストです。

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0.はじめに

3月30日、「社会保障と税の一体改革」の一環として消費税増税法案が閣議決定されました。私は政策担当者として法案の内容に責任を持てなくなったため、民主党政策調査会副会長を辞することにいたしました。

意外なことと思われるかも知れませんが、民主党では全ての議員が「消費税の増税は将来的には必要である」と考えています。その点では、自公政権時代と異なります。ただ、私を含めて「先にするべきことがある。今は慎重であるべき」と考えている議員もたくさんいます。

党の会議は3月14日から27日(正確には28日未明)まで8回を重ねました。連日深夜に及び、日付が替わるまで議論することは珍しくありませんでした。なぜ、そんなに長時間の議論だったのか。端的に言えば、税率を引き上げること以外、中身が詰まっていなかったからです。消費税増税は、国民の理解がなければすることはできません。今回の法案の内容では、私は国民の皆様を説得することはできません。

今後、政府と民主党は、法案の審議までに、党内に設置されるワーキングチームなどで詰まっていない中身を詰める作業をすることになっています。そこで、閣議決定の機会を区切りとして、今後の作業で詰めるべき論点などを私なりに整理するため、8回の党内会議で詰め切れなかった論点についてまとめておくことにしました。

前原政調会長が挙げていた論点として、(1)逆進性対策、(2)経済状況の好転(デフレ脱却)の2つがあります。また、大綱で定められていて法案が閣議決定されるまでにできなかったもの(=閣議決定(大綱)違反)として、(3)与野党協議、(4)政治改革・行政改革の2つがあります。加えて今年度の「給付国債」を20年間で均等に償還する(5)年金法の改正の問題点があります。以上の5点が、私が3月28日の政調役員会(第49回)で「政調会長に一任はできません」と申し上げた際に伝えた理由でした。

この他にも、「本当に日本がギリシャ化するのか」という国債の信認の論点などがあります。これら、法案のベースとなる事実認識の議論については、この原稿とは稿を分けて別途書きたいと思います。

以下、上で述べた5点の論点について、詳細を記述して参ります。


1.「逆進性」対策

消費税の引き上げは、より経済的に弱いところに強く影響が出ます。経済的に強い都市部や大企業であれば増税を引き受ける体力があります。しかし、地方や中小企業、低所得者層は、増税の影響をもろに受けることになります。

私は、特に低所得者層に強く影響が出る、いわゆる「逆進性」への対策が必要だと昨年から強く主張して参りました。その結果、昨年末から年始に政府与党でとりまとめられた「素案」や2月に閣議決定された「大綱」には、「所得の少ない家計ほど、食料品向けを含めた消費支出の割合が高いために、消費税負担率も高くなるという、いわゆる逆進性の問題も踏まえ、(中略)再分配に関する総合的な施策を導入する。」さらに、「上記の再分配に関する総合的な施策の実現までの間の暫定的、臨時的措置として、社会保障の機能強化との関係も踏まえつつ、給付の開始時期、対象範囲、基準となる所得の考え方、財源の問題、執行面での対応可能性等について検討を行い、簡素な給付措置を実施する。」と文言が入りました。(大綱32頁)

しかし、政府原案には、「簡素な給付措置」について、その内容が入っていませんでした。つまり、法案提出の事前審査の段階になっても、「逆進性の問題」を解決する「再配分に関する」「簡易な給付措置」の内容は詰まっていませんでした。

党の議論でも、この点が問題になりました。

逆進性対策には、財源が必要です。予算は、憲法上、内閣に提出権があります。予算について、与党は政府に対して意見は言えますが、予算の修正を政府に強制することはできません。そのため、政府は法案の閣議決定までに、2014年4月からの消費税率引き上げと同時に行う「簡素な給付措置」の内容と財政規模を与党に示すべきでした。

今後、この「簡素な給付措置」の内容については、党内税調の中に設置される「簡素な給付措置及び給付付き税額控除検討WT(仮称)」で議論されることになります。(3月29日政調役員会(第50回)決定)

3月30日に閣議決定された「検討課題に対する法案提出後の対応の方向性」によると、「消費税の所得に対する逆進性も踏まえ、低所得者対策のための暫定的、臨時的な措置として行う「簡素な給付措置」については、法案の審議入り前に、関係5大臣において具体化にあたっての基本的な考え方を示す。その上で、与野党の協議も踏まえて具体案を決定し、消費税率(国・地方)の8%への引上げ時から給付付き税額控除等の導入までの間、毎年実施する。」となっています。

今後の論点としては、

(1)「法案の審議入り前に」示される「関係5大臣において具体化にあたっての基本的な考え方」は、いつ、どんな内容で示されるのか。

(2)「具体案」は「与野党の協議も踏まえて」「決定」されるということだが、与野党協議の前提となる党内での合意形成は、WTでいつから始まり、政府からはいつ具体的なたたき台が示されるのか。

というようなものが考えられます。


1−2.消費税8%→プラス3%の行方

「簡素な給付措置」の派生論点として、2014年4月からの消費税率引き上げ、プラス3%分がどのように使われるのか、という論点があります。

党内議論の第8回(最終回)で明らかになったように、「プラス3%分7.5兆円は、どのように使われるのか」という私の質問に対する政府からの回答はなく、使い道は分かりません。ちなみに、2015年10月からのプラス5%分は、4%分が社会保障の安定化のため、残り1%が社会保障の機能強化と政府からの資料では位置付けられています。

プラス3%分は、社会保障の安定化のために必要な4%分よりも少ないので、まずは安定化に使われるとも考えられます。しかし、そのように使われるのだとすれば、社会保障の機能強化は行われないことになります。それでは、社会保障の機能強化なくして消費税率の引き上げに賛同する国民はいらっしゃらないでしょう。

この論点は、「簡素な給付措置」の財政規模とその財源を考える際に重要になります。

プラス3%の枠外で社会保障の機能強化がなされるのであれば、「簡素な給付措置」の財政規模は、同じくプラス3%の枠外で考えれば良くなります。もっとも、長妻厚労部門座長の回答では、そもそもプラス5%の場合でも、給付付き税額控除・簡素な給付措置のいずれも3.8兆円(機能強化部分)の枠の外だとされていたのですから、そもそも「簡素な給付措置」の財政規模と財源は、消費税とは別のところから持ってくるという話なのかも知れません。


2.「経済状況の好転」

消費増税を景気が悪い時に行うと、経済が不可逆的に悪くなるおそれがあります。そこで、大綱29頁には、消費税増税には「経済状況を好転させることを条件」とすることが明記されています。しかし、政府原案には、その中身が具体的には書かれていませんでした。

国民の皆様に御納得いただくためには、最低限、名目3%、実質2%といった新成長戦略で定めている数値など、目安となる数値目標を掲げることが必要です。今のままの内容では、いくら経済状況が悪くても、その時に政府が「今は景気が悪くない」と言い張れば、そのまま自動的に消費税率が上がります。果たしてそれでいいのか、という点が与党の事前審査で大きな問題となりました。

この論点に関して規定するのは、附則18条です。

与党の事前審査の過程で修正された後の附則18条は、以下のようになっています。

附則18条

第1項「消費税率の引き上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。」

第2項「この法律の公布後、消費税率の引き上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条(注:2014年4月に8%)及び第三条(注:2015年10月に10%)に規定する消費税率の引き上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」

一読して「第1項に数値目標が入った」と見えるかも知れません。しかし、そうではなく、第1項は2010年6月に定めた新成長戦略を行っていくということを書いているに過ぎません。その新成長戦略の結果、どのような結果になろうとも、今の第2項の規定では、新たに立法措置を行わない限り、自動的に消費税率は2014年4月から引き上げられることになります。

前原政調会長は、「デフレを脱却しない限り、消費税率を挙げることはできない」と会議で仰っていました。そのため、最低限、デフレ脱却を条件とするような規定を、修正案には盛り込むべきでした。

2006年3月に政府が定義した「デフレ脱却」とは、「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないこと」である。(平成18年3月15日 参議院予算委員会提出資料「デフレ脱却の定義と判断について」(3月6日平野達男参院議員要求))

つまり、「消費税の税率の引き上げについては、物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがない状況に到ったことを条件とする」というような規定を設けるべきでした。このデフレ脱却の要件を盛り込むこと、賛成派の議員から提案されたものでもありました。


3.与野党協議

大綱4頁では、「本大綱をもって野党各党に社会保障・税一体改革のための協議を提案し、与野党協議を踏まえ、法案化を行う。」と規定しています。与野党協議を行わずに法案化をしたことは大綱違反(=閣議決定違反)になります。

大綱違反が重大であるということは、形式的な問題ではなく、重要なのは、野党が賛成しなければ、「ねじれ国会」の現状では、参議院で通すことができないという実質的な理由があるからです。この実質的な理由があったからこそ、大綱にこの記述が盛り込まれたわけです。(昨年末の「骨子」作成→年頭「素案」決定のプロセス)

与野党協議のためには、平成21年度税制改革法案附則104条の各条件を満たしているのかということも論点になります。1の逆進性の解決や、2の経済状況の好転という論点は、附則104条の規定を見て分かるように、附則104条の条件となっています。

1や2、その他の論点が満たされなければ、附則104条の条件を満たすことはできないので、野党としては「そのような中途半端な内容の法案(や予算措置)ならば、賛成できない」という主張ができることになります。

野田政権は、附則104条に則って消費税増税法案を提出したと主張していますが、その主張を効果的にするためには、「自公政権の時に作った法案に基づいた提案であり、そのための前提条件は(具体的にこれこれ)このようにできているのだから、審議に応じないのはおかしい」といえるだけの内容の詰めをしておく必要があります。

4月1日(日)に自民党の石原幹事長が「早期解散」「小沢抜き」という2つの条件をつけて、法案の賛成をにおわす発言をしました。これは(1)民主党の分裂を狙ったものであること、(2)附則104条の各条件を満たした場合に、その点を民主党から攻撃されないようにするため、という2つの目的があったように思われます。

与野党協議が進まないままに法案の採決がされることになれば、どのようになるでしょうか。野党が法案に反対する場合、最悪には、民主党の中からも反対者が出て法案が否決される可能性もあります。そうすれば、野田総理が政治生命をかけていると明言しているゆえに、野田内閣は総辞職か解散を迫られることになります。

その場合、民主党が分裂する中で総選挙となれば、利するのは民主党以外の政党になります。それゆえ、与野党協議が整わない方が野党にとって有利なのであるから、野党はそう簡単には与野党協議に乗ってこないことは明らかです。


4.政治改革・行政改革

大綱31頁には、「衆議院議員定数を80 削減する法案等を早期に国会に提出し、成立を図る。」とあります。しかし、今日においても、記載の法案は国会に提出されていません。

そもそも、大綱31頁に政治改革・行政改革の項が盛り込まれたのは、「政府与党が信頼を失っている時に、大増税を行うのは主権者である国民の皆様の御理解を得られない」という共通の認識があったからです。政治改革・行政改革は、増税の前提となる国民の信任という条件を満たすための必要条件に過ぎず、国民が納得しているかどうかという点で、その達成度を判断しなくてはなりません。


5.年金法の改正

税制改正法案とは別の法案として閣議決定された年金法の改正案では、今年度の交付国債(2.7兆円)とその運用益分計3兆円の償還について、20年かけて毎年1500億円ずつ償還されることになっています。このことにより、政府資料では、基礎年金国庫負担分(2分の1)の安定財源確保のためとして、2.7兆円にプラスして1500億円、計2.9兆円が消費税増税分からまかなわれると説明されています。

しかし、この交付国債の償還については、年金財源の健全性確保という観点からは必要と言えますが、毎年硬直的に1500億円の財源を用意しなければいけないというほどの優先性があるわけでもありません。にもかかわらず1500億円の償還が法定化されると、その分、柔軟な財政運営ができないことになります。


【参考】

野田内閣総理大臣記者会見(平成24年3月30日)
http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/2012/0330kaiken.html

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3月30日 閣議決定「検討課題に対する法案提出後の対応の方向性」
http://firestorage.jp/download/3eca4336f5e79025688877ae48ce84ceff60270d


政府公式見解2006年3月15日「デフレ脱却の定義と判断」
http://firestorage.jp/download/a558e9199de8bec6155ae086f313864e09d06841
デフレ下で消費税を上げることは問題だという認識は急激に広まっています。
しかし、昨日の五十嵐財務副大臣の記者会見でのコメントは違い、デフレ下での消費税増税は可能だとしています。この点は、明確に民主党内の議論とは異なります。