敗戦記念日を前に考える>クルーグマン教授と孫崎享先生


8月15日の敗戦記念日を前にすると、いろいろなことを毎年考えます。日常的な忙しさから少し離れ、お盆で先祖への思いをあらたにするとともに、私の家系は大阪大空襲で多大な被害を受けたので、戦争と平和というテーマを「中村家」への思いを通じて毎年考えることになります。

先日、ポール・クルーグマン教授と孫崎享先生の近著を紹介いたしました。2冊とも、とても良い本だったので、あらためて紹介するとともに、この2冊に書かれている内容を組み合わせて考えると、これからの日米関係をどうするべきなのかということが見えてきたので、今日はそのことを書こうと思います。

さっさと不況を終わらせろ

さっさと不況を終わらせろ

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)


私の立場は、孫崎先生と同じく、「「日本には日本独自の価値がある。それは米国とかならずしもいっしょではない。力の強い米国に対して、どこまで自分の価値をつらぬけるか、それが外交だ」という考え」(孫崎p.vii(はじめに))の立場です。(対米「自主」路線)

日本社会で「右翼」と言えば「対米追随」がセットになっているのが私にとっては何とも不思議で、また、対米「自主」路線の私たちが「左翼」とレッテルを貼られているというのも、何とも不思議なことです。こんなに愛国者の人間もいないだろうに、と自分のことを思うのですが。


私は、以前のブログ記事でも書きましたが、アメリカ合衆国という国は、重層的でリベラルな国です。だから、日本がきちんと自分たちがどのような国をめざし、アメリカ合衆国と平和的な関係を維持していきたいのかということをメッセージとして発していくことで、真の友人関係が作れると思います。
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20100903
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20100724


クルーグマン教授の「さっさと不況を終わらせろ」を読めば、今年の大統領選挙が非常に重要だということが分かります。民主党オバマ大統領が政権を維持できれば、財政拡張政策が取られる可能性があるけれども、共和党ロムニー候補が政権につけば、財政拡張政策は取られないだろうと。


しかし、今、アメリカが財政縮小政策を取れば、アメリカ発の世界大恐慌になりかねません。これは、日本としても阻止しなければなりません。現在のアメリカの財政を支えているのは、日本と中国からの投資なので、日本からのメッセージとしては、以下のように明確に意思を伝えることが必要なのではないかと思います。

「アメリカ経済を守るため、日本国は今後、官民挙げて不用意に米国債を売りません。」

「日米の貿易不均衡を解消するためには、(TPPよりもむしろ)積極的に日本国民が米国商品を消費できるように日本経済の再生をしなくてはならないため、日本も財政拡張政策を取ります」

「そのためには、日本国債も暴落をしないように、万が一の時にはアメリカ政府も御協力下さい。」


大量の国債を発行する時、アメリカも日本も財政当局者(財務省)はとても不安になります。「一時的に売られたらどうしよう」ということです。

これは、日本よりも、経常収支の赤字国、対外純負債国のアメリカの方が深刻な状況におかれているわけです。「いつまで中国や日本は、米国債を支えてくれるだろうか。」ということです。日本に対してアメリカが「追随」路線を取るように圧力をかけるのは、この辺りの認識に対して日本がどのように考えているのか、ハッキリとしたスタンスを示していないからです。

だからこそ、先ほど申し上げた「アメリカ経済を守るため、日本国は今後、官民挙げて不用意に米国債を売りません」という明言が必要だと考えるのです。


日本がこのような形で、今世界が必要としている「日米協調で日米ともに財政拡張政策を取り、世界的なデフレを脱却させる政策を先導する」という政策を実行することに同意できれば、米国で政権交代が起ころうとも共和党が単純な財政縮小政策を取ることはできなくなります。


あと、日本の輸入が少ないのは、日本の消費者に可処分所得が少なく消費する力が弱いということが理由としてあります。
確かに、日本が対米黒字を利用して日本からの富を米国に貫流して、米国の財政を支えて米国を富ませるという政策を維持していくという方法もありえます。
しかし、それでは、アメリカ国民も「日本がモノを売りつけてくるから自分たちの雇用が守られない」という思いを払拭することはできないですし、何よりも日本国民が何時まで経っても豊かになれません。


だから、日本の労働者が完全雇用を実現できるように、日本も財政拡張政策を取る必要があります。財政を大きくすることで、経済は回復します。経済が回復されれば、労働分配率を上げたり、労働時間を短縮したりして、労働者の可処分所得と可処分時間を増やし、商品を消費するカネと時間を労働者に与えることができるようになり、経済が好循環になって行きます。


そのためには、日本の財務省がびびらないように、「世界的に通貨危機を起こさないように、特に、世界どこでも通用する通貨(これは、米ドルと円とユーロしかありません)のドルと円を日米が協調してしっかりと守る」と両国政府がアナウンスすることで、世界経済は、ユーロ危機を脱することができるようになるわけです。


国際経済と戦後史を知れば、新しい未来が見えてきますね!
私たち「国民の生活が第一」は、この路線で頑張って行きたいです。
(もっとも、私のこの意見が党の皆に賛同いただければの話ですが。)