中村てつじ「日本再構築」ブログ

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[質問への回答]日本は経常黒字国の力を活用すべき

財務省の罠』ウェブ公開版第一稿を御覧になった方から質問をいただいています。今後の『財務省の罠』の記述を充実していくため、質問に答える形で原稿を書いていくことに致します。

今日の記事は、『財務省の罠』p.33からの「2.なぜ「世界一の金持ちの国」なのに豊かさの実感がないのか(レジュメ「貿易黒字は善か?」参照)」の部分に対する質問への回答です。

財務省の罠』公開版第一稿(PDF:57頁)本文は以下のURLから御覧下さい。
DL http://bit.ly/SfvtZ1
直表示 http://bit.ly/YsI2Vf

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【第四章 国際収支と「国の借金」】
5.[質問への回答]日本は経常黒字国の力を活用すべき
(本文:約2940文字)


本書のウェブ公開版を御覧になった方から、「中村さんは経常収支の黒字が悪いと仰っていますが、経常収支の黒字の分だけ他の国にお金を貸しているということは、将来的な資源を買う原資を持てるということなので良いのではないでしょうか」という趣旨の御質問をいただきました。

結論から申しますと、私は、経常収支の黒字は良い面と同時に悪い面もあるということをお伝えしているだけで、悪いとは申しておりません。単純に「貿易収支は善」だと全面的に肯定するべきでなく、悪い面にも目を向けていくべきだというのが私の主張です。


外貨建ての預金や外国債を持っていれば、その外貨を使って外国からの輸入に備えることができるのは、対外純資産国のメリットです。しかし、物理的な財やサービスを輸入しなければ、現実の生活にはプラスになりません。

外貨建ての通貨は、その経済圏で回っているだけです。その通貨が強制的に通用する経済圏でのみ、その通貨は活躍できるわけです。日本居住者が外貨建ての通貨や資産を持っていても、それは、その外貨経済圏の配当を受ける権利を持っているに過ぎず、直接は日本居住者の生活を豊かにするわけではありません。


「それでは、どんな対案があるのか」と聞かれるかもしれません。私としては、外為特会の仕組みを活用して、日本政府が為替介入で得た外貨を使って対外的に現物の投資をし、将来の資源確保を行うという仕組みを作るべきだと考えます。

具体的には、資源の権益を買うようなことです。例えばアフリカへの直接投資を日本政府が直接行う。また、法整備の支援についても、日本政府がその国の文化を尊重しつつ、他国からの投資を呼び寄せやすいような経済法の立案に協力する。その国の経済発展に資するような取り組みを行えば、日本の国際社会におけるプレゼンス向上にも繋がります。


一方で、このような「対案」を実現するためには、円が強くないといけません。強い通貨を持っている日本だからこそ、円を日銀が発行し、その円を政府が短期証券で吸い上げ、外貨を買い、対外的な投資ができるわけです。

そのためには、経常収支の黒字国であるということが生きてくるわけです。これは、経常黒字国の良い点です。


私が本章(第四章)で申し上げたいのは、(1)経常収支の黒字国ゆえに、生み出した生産物よりは社会全体が受けている利益が小さく、豊かさが実感できない状況に繋がっているということ、そして、(2)経常収支の黒字国=対外純資産国ゆえに自国通貨建ての国債を発行して国内経済を向上できること、の2点です。


日本政府の問題は、この自国通貨が高いという現象を戦略的に活用して外交関係を結んでいくというビジョンを持っていないように思える点です。

日本政府の為替介入額を示すデータは、財務省の「外国為替平衡操作の実施状況」統計表一覧というサイトから御覧になれます。
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/feio/data.htm


その財務省外国為替平衡操作の実施状況」の中にある「過去の介入実績全データ:(平成3年4月〜平成24年6月期)」を御覧になると、民主党政権下での為替介入額が総額16兆4,220億円にも上ることが分かります。
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/feio/foreign_exchange_intervention_operations.csv


ちなみに、このページの表示はCSV形式になっているので、全選択→コピーの後、一度テキストエディタに貼り付けCSV形式のファイルとして保存して頂く必要があります。その後、そのファイルをエクセルで開くと、表として御覧になることができます。上の16兆4220億円という数字も、エクセルで計算しています。


話を元に戻します。民主党政権も、菅政権以来の2年余りで16兆4220億円もの為替介入をしているということは、買ったドルで米国債を買っているということでしょう。

確かに、為替介入で得た外貨でどこの国債を買っているのかということは、公開されていませんので推測になりますが、おそらくドル建てのまま持っていると考えるのが普通です。なぜなら、為替介入の動機がドル安・円高を食い止めるためということなのですから、得たドルを売って他の国の通貨を買えばドル安方向に向かうため、結局、ドル安を止めることはできないからです。


そこで、そのドルをどうするかということになると、ドルをそのまま通貨で持っていても配当が付かないので、何らかの形で投資をすることになります。今は、換金性の高い米国債で運用しているものと思われます。しかし、余りにも米国債に偏重しているのではないかということを問題にしたいわけです。


ちなみに、日本国政府が持つ外貨準備は、以下のサイトで御覧になれます。
財務省「外貨準備等の状況」統計表一覧
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/official_reserve_assets/data.htm


確かに、アメリカにとっては、米国債で運用してもらえれば、アメリカの財政を日本国政府に支えてもらえることになるので、メリットは大きいでしょう。日本も、明示的にその意思を示してやっているのであれば、外交的に効果もあるでしょうが、現状はそうでない以上、日本国民に対してきちんと説明を果たす必要があります。


私は、「アメリカにそんなに感謝されていないのであれば、外為特会で買ったドルを使って、ドル建てで投資できるモノに重点的に投資すべき」という考え方だということです。

日本がドル建てで対外投資をするということは、それぞれの国にとって大きなメリットがあります。アメリカは経常赤字国、対外純負債国なので、長期的に見るとドルは通貨安の方向に向かいます。

投資される第三国(例えばアフリカでの鉱山の開発みたいなことをイメージしてください)にしてみれば、将来通貨高になりそうな円建てで投資してもらうよりも、国際的にも一番通用し、かつ、将来通貨安になりそうなドル建てで投資してもらう方が、将来の返済が楽になります。

また、アメリカにとっても、自国通貨が第三国同士の通商に使われることは、自国通貨の信認を上げることになるので、メリットは大きいです。

日本にしてみれば、自国の負担でアメリカと第三国にメリットを与えることになりますが、そもそも投資に使うドルは為替介入により既に調達しているものです。この10年間は外為特会に積んであるだけのものですから、新たに負担をして調達するものではありません。

また、日本にとっては、ドルは自国が安全保障条約を結んでいる国の通貨です。ドルの信認を維持することは、自国居住者が持つドル建て資産を守ることにもなるので、意味があります。


次章(第五章)が円経済圏の話だということに対し、本章は、円を使って外貨経済圏にどのように日本がコミットすべきかという外貨経済圏の話です。通貨建てで考えなければ、両方を混同しがちなので、あらためてまとまった記述をさせていただきました。