内田樹「日本辺境論」


新年度になりました。内田樹(うちだ・たつる)さんの「日本辺境論」を再読しています。良くも悪くも、つくづく「日本という国は特殊だなあ」という実感が湧きます。

日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)

いま、いわゆる「アベノミクス」で円安となり、輸入物価が高くなっています。しかし、物価が高くなることで景気が良くなるわけではありません。景気が良くなって物価が上がるのはいいのですが、今回起こっているのは逆です。景気が良くなる前の物価高なので、きちんと見ておく必要があります。


円安誘導をして、輸出を増やす、というのが自民党安部政権の方針。このような貿易を通じた経済政策を考える時には、「どの国の人が輸入をする力があるのか」ということを考える必要があります。

日本は、「誰かが買ってくれる」と漠然と思っていますが、2000ゼロ年代を引っ張ってくれた欧州は、ユーロバブルの崩壊で無理。そこにシェールガス革命のアメリカが出てきたので、アメリカに期待をする。だから、TPPもやらなくっちゃ、ということなのでしょう。


しかし、本来、世界第3位の経済大国になったような国は、自国での消費を増やすということがなければ、経済の成長はありません。もっと言えば、欧州やアメリカが引き受けてきたような立場にならなければなりません。

そういう視点が必要です。しかし、そのことを「日本は辺境国である」という意識が阻んでいる。
そういうことが分かる良い本です。

日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)