中村てつじ「日本再構築」ブログ

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5:もう一つの信用創造「国債の発行+政府支出」(「信用創造」のしくみ(3))

(2013/09/07「中村てつじメールニュース」バックナンバー)

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いよいよ「通貨のひみつ」シリーズ最終回、その5です。

今まで説明して参りましたように、民間が使えるお金を増やす方法には2つの方法があります。今号ではもう一つの方法である「国債の発行+政府支出」の説明をいたします。


ここでは、仮に1兆円の国債を政府が発行して銀行が引き受けるというケースを考えます。より具体的には、A銀行・B銀行・・・・J銀行と日本の銀行は10行だと単純化して、それぞれが1000億円分ずつ引き受けるという場合を考えます。

また、金融緩和により各銀行の日銀当座預金口座には十分な残高が積み上がっていて、それぞれ日銀当座預金残高が1兆円ずつ、計10兆円あったとします。

国債の引き受けのため、各銀行は、1000億円ずつを日銀にある政府口座に振り込みます。そうすると、各銀行の日銀当座預金口座の残高は1000億円ずつ減り、9000億円になります。

【資産】
A銀行 日銀当預1兆円 → 日銀当預9000億円+国債1000億円
B銀行 日銀当預1兆円 → 日銀当預9000億円+国債1000億円



J銀行 日銀当預1兆円 → 日銀当預9000億円+国債1000億円

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銀行全体 日銀当預10兆円 → 日銀当預9兆円+国債1兆円


政府口座に入った1兆円は、政府支出を通じて民間の経済主体(企業・家計)に振り込まれます。前々号では、銀行振り込みの裏で銀行同士がどのようにしてその振り込み額を決済しているのかという説明をいたしました。

政府から民間へ政府支出の代金が振り込まれるということは、その決済のため、A銀行・B銀行・・・J銀行の日銀当座預金口座に、決済のため政府口座から振り替えがされることになります。

それぞれの銀行によって振り替えの額にはばらつきはありますが、銀行全体で見れば総額は1兆円、銀行の日銀当座預金口座に戻ってきます。

仮に、ある銀行が手元の日銀当座預金口座残高を元の1兆円に戻したい銀行は、引き受けた国債を他の銀行に売買すればいいだけの話です。


【資産】
銀行全体 日銀当預9兆円+国債1兆円 → 日銀当預10兆円+国債1兆円
【負債】
銀行全体では、預金1兆円が負債として増えた


このように、「国債の発行(引受)+政府支出」の過程を見れば、日銀当座預金の額は、全体を通じて10兆円で変わりません。つまり、国債を発行しても、結局、政府支出により銀行にお金が戻ってくるので、マネタリーベースの額は一定だということがわかります。

銀行全体の資産としては、日銀当座預金10兆円の他に、国債1兆円が増えていることがわかります。銀行全体の負債としては、資産の国債1兆円にバランスする形で、民間に対する預金が増えていることがわかります。

このように、政府が1兆円債務を増やしている分だけ、民間が持つ預金の量が1兆円増えているということがわかります。つまり、マネーストックの量が増えています。


マネーストックベースマネーの差は、「信用創造」であると定義されます。(出典:齋藤誠ほか「マクロ経済学」(有斐閣:2010)p.457)

信用創造の方法には、融資のほか、国債の発行+政府支出があるという説明は、当たり前すぎるからなのか、細かすぎるからなのか、マクロ経済学の教科書や金融論の教科書には書かれていないようです。
(参考:同上、島村高嘉・中島真志「金融読本」第28版p.56)

参議院議員の現職の時に、国立国会図書館の調査官、参議院財政金融調査室の調査官、財務省の調査課長などに尋ねましたが、文献もないようです。

ただ、国債の発行+政府支出という方法は、デフレ経済下においては、融資が進みにくい以上、非常に重要な手段であるはずです。このことをなぜ経済学者や金融研究者はきちんと世間に伝えないのか、私はいろいろな人に聞いているのですが、明確な答えをもらったことがありません。


以上が、「通貨のひみつ」全5回の説明です。

今までの一連の説明をお聞きになって、どのような感想をお持ちになったでしょうか。

「それだったら、日本はいくらでも国債を発行できるのではないか。そんなことはおかしいのではないか」という疑問をお持ちになったのではないでしょうか。私が講演をすると、多くの方がこの疑問を口にされます。

実は、以上の「民間が持つ預金を増やすために国債を発行することができる」という論理は、ある前提条件の下で成り立ちます。

その前提条件とは、
1.自国に発行権限がある通貨建てで国債を発行していること
2.マネーストックを増やしてもインフレになりすぎない物価水準であること
です。

日本は、世界でも、まれに見る2つの前提条件を兼ね備えた国です。

日本が財政危機ではないのは、自国通貨建てで国債が発行できるから、言い換えれば、通貨が強いからです。財政が破綻している国は全て、通貨発行権のある自国通貨建てでは国債が発行できない国ばかりです。国家財政の破綻は、財政からではなく、為替から起っています。

例えば、経常収支の赤字国なのに、アメリカやイギリスが自国通貨建てで国債が発行できているのは、通貨が強いからです。経常収支が赤字でも、経済が強いゆえに通貨が高いからです。日本も、経常収支が赤字になったら、即、財政危機になるわけではありません。


今号で「通貨のひみつ」シリーズをひとまず終了いたします。

最後のところで見えてきたように、「通貨のひみつ」は実は国際的な通貨同士の関係へと話が続いて参ります。また、日本とギリシャはなぜ違うのかという疑問も持たれたかもしれません。皆さまからリクエストがありましたら、質問にお答えする形で、続編をお伝えしたいと思います。

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「通貨のひみつ」シリーズ バックナンバー

0:消費税増税に関連して〜いわゆる「お金を刷る方法」とは何か?
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20130902

1:「通貨」の定義
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20130903

2:融資=貸付のしくみ
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20130904

3:なぜ銀行は「貸せない」のか
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20130905

4:2つの通貨
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20130906

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【追記】補足説明「「政府支出と銀行振込」が通貨を増やす」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20130910