「クラウディングアウト」は起こらない

昨日、大阪で行われた勉強会に参加してきました。
https://ameblo.jp/yokofutorase/entry-12605685118.html

いち参加者として、ほかの参加者からの質問に答えるという形は、とても居心地がよかったです。また、いままでに知ったことを一人の民間人として伝える側に回ることもとても大切なことだと実感しました。

さて、その中で受けた質問に対して、ブログでも書いておきます。

 

質問は「国債を発行すると、お金が政府に取られるので、それだけ民間に回るお金が少なくなるのではないか」という質問です。

経済学では「クラウディングアウト」(締め出し効果)と言われるものです。

 

いままでの主流派経済学では、[国債の発行+政府支出増]という「信用創造の第2の経路」を無視しています。そのため、国債を発行しても通貨の供給量は増えないという立場を取っています。

(ちなみに、この主流派経済学の立場は、事実誤認をしています。しかし、この間違っている立場が多数派なので、間違いを指摘されても今のところ多数派は無視しています。このように、事実誤認しているのが多数派なので、マスコミでも事実誤認の事実は指摘されません。)

 

そのため、いままでの主流派経済学では、「国債を発行すると、政府がお金を取ってしまうので、金利が上がり、民間にお金が回りにくくなる」という説明をしています。

民間へ回るお金が締め出されるということから、クラウディングアウトと呼ばれています。


しかし、実際には、国債発行の際に銀行からいったん政府に流れた日銀当座預金(いわゆる準備預金)は、支払いの決済のために政府から戻ってきます。

より具体的に言い換えると、政府が支出するときに支払いに使われた小切手は、その小切手を受け取った民間企業・民間人が市中銀行に持ち込みます。そして、次にその小切手を市中銀行が政府に換金するときに政府は日銀当座預金市中銀行に戻します。

 

つまり、市中銀行は、

・資産として国債が増え、

・負債として銀行預金が増え、

→イーブンになります。

 

政府は、

・負債として国債が増え、

→負債増になります。

 

民間企業・民間人は、

・資産として銀行預金が増えて、

→資産増になります。

 

このように、[国債の発行+政府支出増]というプロセスでは、クラウディングアウト(締め出し効果)は起こらず、逆に民間(企業・人)の資産が増えることになります。

 

財政緊縮派がよく言っている「このまま国債を発行し続けると、いつかは個人金融資産が国債発行額に追いつかれて国債発行ができなくなる」という話は、以上のようなロジックでありえません。現実的に、いつまで経っても差は縮まりません。


但し、金融引き締めを行う時には、クラウディングアウトではありませんが、クラウディングアウトに似た状況は起きます。

日本銀行がインフレを抑えるために、金利を上げた場合、民間の借り入れは減ります。そうすると、信用創造の結果生まれたお金のうち、[国債の発行+政府支出増]の分は減りませんが、民間の借り入れで生まれた分は減ります。

このような状況をクラウディングアウトと呼べなくないかも知れませんが、国債の発行によって締め出されているわけではなく、金融政策で信用収縮が起きているので、クラウディングアウトではないというのが正確です。