電話加入権と税制

NakamuraTetsuji2005-11-04

「また、総務省は責任回避をしたな。」

今日(2005年11月4日(金))の日本経済新聞の第一面。
記事を読んで、昨年のことを思い出しました。


見出しは、「電話加入権 当分廃止せず」「NTT・総務省」、「他社固定サービス不振で」「税制改正案撤回へ」とあります。総務省が、当初に予定していた税制改正案は、電話加入権の廃止を前提にして、段階的な無税償却を認めるというものでした。

KDDI日本テレコムが参入した固定電話サービスが不振であることから、NTTは電話加入権施設設置負担金)を廃止せず、それゆえに、総務省は、電話加入権については無税償却ができる税制改正の要求を行わないこととしたというのが、記事の趣旨です。


私は、そもそも、この総務省の理屈が適切なのか、疑問なのです。

「固定資産」とされる物は、市場でほとんど価値が減少しないから価値が「固定」している物として税制で扱われている物のはずです。政府が昨年私に回答した答弁書にも、「電話加入権は、時の経過によりその価値が減少しないものであることや、市場において譲渡することにより投下資本を回収し得ることから、法人税法及び所得税法において、減価償却できない無形固定資産として扱われている。」としています。

しかし、読者の皆さんもご存知のように、電話加入権の市場価格(特に買取価格)は、ゼロに近い下のほうに張り付いています。企業の現場で頑張っていらっしゃる経営者の多くは、実態に即する形で「電話加入権を、固定資産ではなく、償却可能資産にしてほしい」と思っていらっしゃいます。

市場でほとんど無価値のものが、なぜ、「無形固定資産」なのでしょうか。答弁書の前提条件が、今では崩れているのです。


総務省の理屈は、

電話加入権施設設置負担金)は、NTTの問題。
    ↓
だから、NTTが廃止と決めなければ、税制の問題にはしない。

というものです。


しかし、本当ならば、

電話加入権は、かつてのような確固たる価値を持っていたものではなく、市場価格がゼロに近いものになっている。
    ↓
だから、その実態に合わせて、償却可能資産に変更しよう。

とするのが当たり前の考え方です。


このような国民感覚にかなう制度改正にならないのは、関係する総務省財務省も、このような制度改正によって利益を受けないからです。街の経営者が望む制度改正をするのが、本当の意味での「改革」であるはずです。

今の政府には、省益を優先する官僚主義からの脱却をしていただきたいと、あらためて痛感しています。


【参考資料】

「国会からの手紙」第211号:電話加入権の価値がゼロになる日(2004年10月6日)
http://tetsu-chan.com/tegami/211_gou.htm
「国会からの手紙」第212号:電話加入権の価値がゼロになる日(2)(11月15日)
http://tetsu-chan.com/tegami/212_gou.htm


衆議院総務委員会(2004年11月4日)
http://tetsu-chan.com/katsudo/kokkai/gijiroku/041104.html


電話加入権に関する質問主意書(2004年12月2日 提出)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a161071.htm
(上記趣意書に対する政府の)答弁書(2004年12月10日 答弁)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b161071.htm


日本経済新聞(2005年11月4日(金))の記事
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20051104AT1F0300803112005.html