夕張市立診療所(夕張希望の杜)を視察
(記2008/07/13)
- 作者: 村上智彦
- 出版社/メーカー: エイチエス
- 発売日: 2008/05
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◇ 視察までの経緯
2008年7月9日、元「夕張市立総合病院」、現「夕張医療センター」に視察に行って参りました。(2008年6月1日22時からのETV特集(NHK教育)をご覧になった方も多くいらっしゃると思います。)
ご存じのとおり、夕張市は破綻し、財政再建団体となっています。地域医療は、夕張市立総合病院が担っていたのですが、31億円の負債を抱えて廃止になりました。
http://www.kibounomori.jp/shindan.html
その後、献身的な村上智彦医師が、個人借金を1億2000万円し、医療法人「夕張希望の杜」を設立して、昨年(2007年)4月に公設民営の形で地域医療を引き継ぐ形になりました。
しかし、当初から予想されていた通り、医療本体の経営は順調であっても、病院の建物の運営にかかるコストが膨大になって、存亡の危機に立っています。
本来ならば、病院の維持管理は夕張市側の責任なのですが、財政再建団体となっていて、財政再建計画に病院のことが入っていないので、お金を出さない(出せない)のです。
なぜ、病院の建物がそうなっているのかと言うと、炭坑の街の病院であったため、燃料が無尽蔵にあることが前提で、断熱などのことが全く考えられていないということなのです。
同じ規模の病院ならば、年間1500万円〜2000万円の光熱水費で済むところ、夕張希望の杜の病院は、年間5000万円かかったそうです。(これでも少なくなったそうです。夕張市立総合病院の頃は、年間8000万円)
実は、このテレビ放送の前には、医療現場再建議連の勉強会があり、村上医師に講師になって勉強会を行ないました。
そこで、夕張市を担当する総務省にこの件について、今年は洞爺湖サミットもあり、環境の時代なので、病院に対する外断熱改修なども考えて、モデルケースにすべきなのではないかという主張をぶつけました。
総務省としては、昨年春の公設民営の際に、1000万円かけて一応の補修をしたので、それで一応のことはしているという答えでした。
私は悔しかった。
外断熱改修などの対策をすれば、光熱水費は劇的に下がると思います。そして、地域医療の再生のモデルケースになります。
そこで、NPO外断熱推進会議を通じて、専門家の皆様にボランティアをお願いして、費用対効果の調査に行ってきたということなのです。
◇ 視察の感想
行ってみての感想は、結論から書くと、
1.新病院の建設
2.現病院の大規模改修
の2つしか選択肢は残されていないのに、1年から2年かけて、夕張市(+その背後にいる国)は「財政再建計画」を変更し、その際に病院問題を一緒に解決しようとしている。しかし、その間に、夕張希望の杜は、破綻してしまう可能性が高い、というものでした。
建物のコンクリートの質は悪かったです。リネン室の壁が崩れていて、本来あるはずの鉄筋が見えていませんでした。また、昭和47年と昭和48年の建物という話でしたが、村上先生の話によると、昔から務めている看護婦さんの話では、昭和47年の方の建物は、実は昭和32年の建物らしい。昭和47年48年というのも、オイルショックの時代で建築資材が高騰し職人もいない時代だったそうです。
そう言う意味では、非常に運の悪い建物です。
総務省が言っていた1000万円の改修というのも、省エネ改修ではなくて、3階建ての病院を1階のみで使うために医療機器の移動も含めたものでした。
◇ 耐震診断ができない理由
私は、総務省から出向できている夕張市の「地域再生推進室長」に、耐震診断をしないのかと尋ねました。室長は、耐震診断も単独でやることに意味はないので、方針が決まってからやるという回答でした。
専門家の参加者による分析では、もし耐震診断をやってしまうと、ほとんど不適格になるのは見えているので、大規模改修はできず、建替えか新築になってしまう。しかし、財政難から建替えも新築もできないのだろうということでした。
余談ですが、現在、耐震診断をやって不適格という結果が出ることが多いようです。その場合、補助金をもらっている建物ならば、60年持たさないといけないという決まりがあるらしく、つぶすこともできない、しかし、不適格なので使うこともできないということになる。だから、耐震診断は積極的にはしないということが公的施設でまかり通っているようです。
◇ アンバランスな設備
夕張市が破綻する直前の平成14年、病院のボイラーが新調されたそうです。設備関係の専門家の見立てでは定価で1000万円するぐらいのボイラーが3機並んでいます。コンピューター制御で、180度の蒸気を病院に流しています。
しかし、その蒸気を使って、熱交換機で75度のお湯を沸かして循環させている。(戻ってくるときは、60度らしい)また、ボイラー室から熱交換機のある部屋までは、配管が無駄に行ったり来たりしている。かつ、その配管には断熱処理がもうはげてしまっている。
つまり、たくさんエネルギーをかけているけれども、必要なだけというコントロールができず、エネルギー効率が極めて悪い状態になっているということなのです。
ただ、このことを改善するには、簡単なことではありません。
蒸気のシステムは無駄が多いので、医療棟の方を局所的な湯沸かしをおくことにする。配管には、断熱素材を巻き直す。窓にはペアガラスの樹脂サッシを追加する。外皮を外断熱改修する。などなど。
しかし、これらの大規模改修は、建物が堅牢であることが前提です。その点が、どうも怪しい。もともと北炭が作った約50年前の建物なので、きちんと施工されている保証は何もありません。
結局、方向性を決めるためには、夕張市が財政再建計画を変更するしかありません。それが、今年中なのか、来年なのか。夕張市は、今週中に一回目の検討をし、9月や10月に再建計画を変更したい意向を持っているようですが、先行きは見えません。
いずれにせよ、私としては、遅くなって夕張希望の杜が破綻することのないように夕張市に要望しました。
私が参った翌日には、総務省の大臣政務官が夕張医療センターにいらっしゃったようです。政府も動き始めました。迅速な方針決定を期待しています。
参議院議員 中村てつじ
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