奈良県の林道整備・森林会計基準・谷筋と稜線


今日のブログの記事は、備忘録的なメモです。


一.低い奈良県の林道密度

今日(2008年9月30日)は、代表質問までの中日。奈良に帰る前に、林野庁の森林整備部整備課林道事業班の人に事務所に来てもらって、話を聞きました。


1ha(ヘクタール)当たりの林道の長さを「林道密度」というのですが、全国平均が約12m/haに対して、奈良県は3m/haということです。驚きました。「森林県」と言われる奈良県が、全国平均を大きく下回っているという現実。

奈良県で間伐が進まない理由の一つが分かったような気がします。



二.森林会計基準

森林を評価する会計基準の必要性は、政策レポートでも書きましたが、なかなか難しいことも分かってきました。

それは、高密度に作業道が入れられた林地(例えば清光林業の岡橋さんのところでは200〜250m/ha)は、売られることがないので市場には出てこず、市場価格を基準にはできないからです。

通常、林地の値段は、立木の値段から出材コストを引いて出します。

つまり、
林地の値段 = 立木の値段 − 出材コスト
なのですが、

出材にヘリコプターを使ったりするので、出材コストがかかってしまい、立木の値段が低い今では、林地の値段は、ほとんどゼロになってしまうのです。

当然、高密度の作業道がある林地は、出材コストがべらぼうに安くなるので、林地の値段が上がるはずなのですが、その点が考慮されることはありません。

やはり、林野庁が旗振りをして、県単位で分権的な森林会計基準を作る必要があるのではないかと思いました。


三.なぜ林道は谷筋についているのか。

この間、なぜ従来型の林道は、谷筋についているのか考えていました。稜線についていれば、出材は上に引き上げる形になるので、木が滑って落ちてくる危険もなく、安全、かつ、効率的に出材できるのに、そうはなっていないのはなぜかということです。

分かったのは、昔は、「動力を使えなかった」ということです。

当たり前のことですが、自動車や林業機械を使えない時代には、物資の運搬は、物理学的に言えば「位置エネルギー」を使って、高いところから低いところに運ぶという形しか取れませんでした。人力で上に引き出すということは、不可能ですから。

そのため、山から出す木は、下に引き出して、谷に持ってくる。谷には、川があり、川を使って運搬する。そのため、林道をつける場合にも、川に沿って、谷筋に林道をつける。

このようなメカニズムだったことが分かりました。

そのため、山の稜線に林道をつけるということは、当たり前のことではなかったということだったんですね。やっと分かってスッキリしました。