何のための林業政策か


今日(2008年10月2日)、民主党林業政策を実質的に担当していらっしゃる主濱了(しゅはま・りょう)参議院議員岩手県選挙区)に時間を取っていただいて、民主党林業政策に反映していただきたい点について話をしました。


ポイントは、
1.森林会計基準 → 林地共同所有株式会社 → 国有林の国有株式会社化
2.(間伐等の)森林管理 = 排出権発生 のしくみ作り
の2点であることを伝えました。


この2点は、「民主党林業政策に抜けている点です」と主濱議員におっしゃっていただきました。


森林政策については、以前、政策レポートとして8月5日のブログで書かせていただきました。
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20080805

その記事については、森林ジャーナリストの田中淳夫さんのブログで紹介していただきました。
http://ikoma.cocolog-nifty.com/moritoinaka/2008/08/post_cd0b.html


そのブログの「コメント欄」で書かせていただいた「論点整理」について、あらためて備忘的にここに紹介します。(文中の「出発前」というのは、参議院0DA調査に向かう前という意味です。)


+++++(ココカラ)+++++



提案者として、若干、出発前に論点を整理しておきます。


1.何のための会計基準か(会計基準を作る目的)

何のために会計基準が必要かといえば、単に相続税などの「税額を変える」ためではなくて、「セロ弾きオーボワ」さんが、「しかし残念ながら、投資の可否判断をさせる情報を出せる森林がほとんどありません。」とおっしゃっているように、林地に対する投資を呼び込むためには客観的な評価を定める必要があると考えたからでした。


つまり、林地の情報公開、林地の「見える化」です。


奈良県の林地も、小さい単位の所有者が多く管理もできないし、管理を自分に代わってやってくれる森林組合もない(か、ほとんどない)。これは、多くの県で共通している問題だと思います。

しかし、土地を集約化するのであれば、土地を処分する人(売り手)にも明確な基準が必要です。森林ファンドにしても、林地共同所有株式会社にしても、(現物で出資する人も含めて)出資する人にとっては投資です。


売り手も買い手も納得できる会計基準があって初めて、土地の集約化も進み管理もしやすくなります。

当然、持ち続けたい人は、会計基準がどうであろうと持ち続ければ言い訳ですので、安くなっているので手放すのがばからしい人は、そのまま持ち続ければいいということになります。会計基準上は安い評価ということであれば、相続税の対象としても安い評価になるということになるので、一族ないし子孫で持ち続けることはむしろしやすくなります。


むしろ、会計基準が必要になるのは、林地が不動産流通市場に出てくるときです。現在では、誰もが納得できる会計基準がないので評価ができず、破綻する借り手が山を担保にして資金を借りている場合に金融機関が処分する際にたたき売りに近い状態になってしまい、どんどん林地の評価が低くなるという状況があるようです。


「経営的に重要なA,B,C材の育成分布や量の把握は出来ない。」(セロ弾きオーボワさん)という現状を変えるためには、A材・B材・C材の育成分布や量が把握できるようにする会計基準が必要ということでしょう。


つまり、会計基準が必要ならば、
(1)その目的は何であり、
(2)その目的のためには、基準として構成されるファクター(要素)としてどのようなものが必要なのか、要素を列挙し、
(3)また、(1)(2)の評価する手続きを保障する点についても考える必要があると整理できるのではないでしょうか。


ちなみに、(3)の点は、提言に書きましたように、評価する機関が林野庁なのか地方自治体なのか、そして、どのように進めていくのかが、(1)(2)の点にも影響するので、あらためて考慮しておく必要があると考えます。


田中淳夫さんやセロ弾きオーボワさんの話では、基準を作る主体として、林野庁森林組合ではダメだということですね。その理由としては、「もし林野庁に基準づくりをさせたら、間伐何回やったか、なんて単純な基準で全国の山林を画一的に縛りかねない。京都議定書はそれで通っても、私有財産はそうはいかんぞ。」(田中淳夫さん)ということでいいのでしょうか。私も、その点が気になっていたので、「解決策1」として選択肢として明示するに留めました。

市場に任せるということでは、金融機関が登場することになるでしょうが、林業において林地の評価を市場だけに委ねるのはあまりにも林業という長期で考えなくてはならない産業の性質上好ましくないと思うのです。そこで、「解決策2」の形としました。



2.共同所有の対象物は林地か立木か


提言で、なぜ共同所有の対象物を立木に限らずに林地を対象としたのかについては、確かに立木法によって立木は林地と切り離すこともできるのですが、基本的に立木の第一次的な処分権者は、民法上、林地所有者(=林地の所有権者)だからです。物権上、立木を土地から切り離すにも、土地所有者の同意が要ります。マクロでの管理のためには、第一次的な処分権者を集約していく必要があります。


また、100年単位という長期で管理するという林地の特質上、例えば、間伐の度にヘリコプターで出材することを前提とはできず、それならば、高密度の作業道を引くことも重要な要素と言えます。そうすると、作業道がキチンと整備しているのかどうか、また、恒久的な品質で持続可能な品質の林地を維持できるような作業道なのかというような点も、当然、どのように間伐材を出材し、また、育成した立木を処分するのか、ということに影響してきます。


そこで、立木だけでなく、林地も共同所有の対象物にすべきだと考えたのです。


セロ弾きオーボワさんには、立木のみを共同所有とすべき理由として、「共同所有している株式会社の素性が悪い場合、地面を売り抜けて放棄林化する場合がある。立木だけであれば、最初の購入の際の立木評価により真剣となるし、前述の森林評価の正確性も問われる。」と書いていただいておりますが、この部分をもう一度検討していただけないでしょうか。


例えば、林地共同所有会社が立木を売り飛ばして後に何も植えないような「放棄林」となる場合、会計基準としては低い評価になるような会計基準であれば、林地共同所有会社は、伐採後の林地を放棄林にいつまでも留めてはおかないと思います。


また、政策誘導として、例えば、放棄林の状態で10年経ったら、林地共同所有会社に強制的に現物出資させるというような法律を作ることも選択肢の一つとして考えられます。この場合、放棄林という林地を現物出資し、林地共同所有会社の株式を受け取るということなので、憲法29条の財産権の保障についても、憲法違反にはなりません。


そのように考えていくと、「立木+林地」よりも「立木のみ」で共同所有する場合のメリットについては、立木の評価について「より真剣となる」という点がメインのメリットになろうかと存じます。ただ、そのとき、「林地」を加える場合のデメリットはそんなに大きなものになるでしょうか。



3.流通改革の方向性はどうあるべきか


「森林の管理政策よりも森林資源を売れるようにする政策(とくに流通改革)を」(田中淳夫さん)


木材が一番高く売れるのは、住宅資材として。また、一番安くなってしまうのは、バイオマス燃料としてということは、共通認識としていいでしょうか。


さて、それならば、住宅政策は、林業政策の一環と言えると考えられないでしょうか。

住宅政策については、別記事で書いております。
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20080817

流通ということを考える際には、当然、消費者が何を求めているのかという視点が必要です。


外材が選りすぐりで入ってきている以上、国産材よりも高い値段で取引されていても、消費者は支持しています。それならば、品質を上げながら、消費者のニーズに合わす「流通改革」が必要です。

さて、この点については、どのようなことが考えられるでしょうか。


以上、いただいたご意見を3点に整理してみました。この整理自体に対するご意見も含めて、議論していただければ幸いです。


+++++(ココマデ)+++++


田中さんのブログでは、さまざまな提案が寄せられていました。感謝しています。あらためてこのブログに再掲することで、色々な人の意見を伺えればと思っています。


参議院議員 中村てつじ
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