ローコストな200年住宅


6月4日に「長期優良住宅普及促進法」が施行されます。いわゆる「200年住宅法」です。この法律では、大手のハウスビルダーのみが対応できて、中小の工務店は対応できないのではないかという懸念が持たれています。

特に、大手のハウスビルダーの住宅は、坪当たりの単価が高いので、消費者側から見ると、「長期優良住宅」(200年住宅)といえば高い家としか選択肢がなくなるのではないかという点が危惧されています。


そこで、私は、中小の工務店でも、安くて長寿命な良い住宅が提供できるようになる仕組みが出来ないものかと考えてきました。

そんなときに出会ったのが、京都にある「ゼロ・コーポレーション」という工務店の社長が書いた本でした。


200年住める木造住宅のつくり方―低価格でも、長もちする良い家は手に入る

200年住める木造住宅のつくり方―低価格でも、長もちする良い家は手に入る


社長の金城一守さんの熱い思いが書かれていて、「これは一つの雛形(モデル)になるのではないか」と思いました。

ただ、一つ、書かれている内容では、断熱のところで長期優良住宅の「温熱環境等級4」の基準が満たせないと思いました。あまりにも「もったいない」。そこで、その点について、問い合わせの手紙を書きました。そうするとメールで返事が来たので、京都まで会いに行くことになりました。


社長は会うなり、「中村さんの今回の手紙には感謝しています。今日、さっそく、会議を開いて温熱等級4に引き上げることを検討しました。そうすると、従来使っていた素材を少し変え、10万円程度のコストアップで対応できることが分かりました。明日から、この方向で、販売戦略に取り入れることにします。」とおっしゃいました。

ゼロ・コーポレーションは、京都で「まちなか注文住宅」の担い手として、少しずつ伸びている企業なのですが、さすが年間400棟程度の生産を行っている工務店です。意志決定が早い。私が奈良の複数の工務店に持って行ってもなかなか検討されなかった「新住協」への入会にも、その価値に気づかれた様子で、即決されたようでした。


ゼロ・コーポレーションの作る住宅は、標準仕様で坪単価28万8000円です。少し上乗せして、坪単価30万円としても、その値段でキチンと管理された「長期優良住宅」が手に入るのであれば、お金にあまり余裕のない人にとって、選択肢の一つになるのではないかと思います。

これから、戦後建てられた住宅が、建て直すか、大規模リフォームをするか、問われる時代がやってきます。京都のまちなかのように、20坪程度の土地に建っている住宅の場合、この値段設定では、建て直しという選択が可能になるということは、庶民にとって優しい住宅だと思いました。


ゼロ・コーポレーションがやっていることは、何も特別なことをやっているわけではありません。キチンと管理をするシステムを構築しているだけです。もっとも、このシステム作りが難しいのです。

「ディテール集」「設計要綱」「施行手順書」を社内で作成し、ノウハウを標準化する。棟梁や大工の属人的な技術を共有できるようにし、随時、会議を通して改訂作業を行うという点がポイントです。


宅建築については、「オリジナル工法」と「オープン工法」のどちらを選ぶのかという点が重要です。「オリジナル工法」とは、特定のブランドやグループ化によって、消費者に住宅を提供するやり方です。「オープン工法」とは、広く知られた技術を使い、誰でも検証可能な方法で住宅を提供するやり方です。

第三者的な評価を求めるのであれば、オープン工法が良いに決まっています。


金城社長は、「こういうのを公開して、日本の住宅作りのモデルにしたいのです」とおっしゃっていました。しかし、「安くても、キチンと管理さえすれば、長く持つ」ということを信念として持つことは、経営者としての資質の部分に関わる話です。

私は、「たとえ金城社長にそう言ってもらっても、そういうことに気づける経営者は、なかなかいないのではないですか」と素直に感想を伝えました。

社長は、笑っていらっしゃいました。


参考:ゼロ・コーポレーション
http://www.zero-corp.co.jp/


参議院議員 中村てつじ
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