CO2削減と住宅の省エネ化

(プレス民主号外原稿)


◇ 技術集団のNPO

麻生総理が日本のCO2削減策を発表しました。その方法の一つが、「新築住宅の80%を省エネ法の基準住宅にする」ということ。その基準は、住宅性能表示「温熱等級」の最高等級4に相当します。私もこの方針には賛成です。しかし、麻生プランでは、それを実現する方法がきちんと示されていないことが問題です。


特に、このような高度な技術が必要とされる政策は、大手のハウスビルダーのみが対応でき、中小の工務店は対応できなくなるおそれがあります。


その問題を解決するために、私は北海道に向かいました。北海道では、中小の工務店NPO(非営利組織)を作り、技術者集団として高度な住宅生産技術の開発・普及に取り組んでいます。そして、その運動は、今では東北・北陸・北関東・中部地域へと寒冷地以外にも広がっています。現在、670社が参加しています。


その団体の名前は、「新住協」(新木造住宅技術研究協議会)。工法は、囲い込みのオリジナル工法ではなく、誰もが利用できるオープン工法になっています。国立室蘭工大の鎌田紀彦教授が代表理事を務め、大学が開発した技術を惜しげもなく工務店に提供し、北海道立の北総研とも連携を取ることで、在来型木造軸組工法で家を建てる工務店でも、安価な会費で高いレベルの技術が習得できるようになっています。今話題の「高気密・高断熱」という言葉も、このような住宅作りから生まれてきた言葉でした。



◇ 進まない関西での普及

しかし、残念なことに、このような標準的な技術は関西で普及していません。比較的温暖な関西では、省エネや環境の意識を持っている消費者以外は、このような高気密・高断熱住宅に関心がなく、施主として工務店に厳しく要求しないことが背景としてあります。

ただ、前述の麻生プランでも住宅の省エネ化が方針として出され、与野党とも低炭素社会をめざす方向に違いはないので、これから住宅の省エネ化には税制などの優遇措置が拡大されていくことは明白です。ハウスビルダーは、このような時代の流れにいち早く対応する必要があります。


現在、日本の住宅供給は、中小の工務店が、主軸を担っています。消費者が家を建てる時には、多額の宣伝費をかける大手のハウスビルダーに目が向きがちです。しかし、大手は中小の工務店を下請けにしているだけということが多く、直に中小の工務店に頼んだ方が、顔の見える関係もでき、安くて良い家が建てられます。


ただ、中小の工務店を回っていると、驚くほど知識や意識に差があります。「新住協」への入会を勧めても、反応はにぶい。このままでは、近い将来、生き残るのは、一部の優秀な工務店と大手ハウスビルダーの下請けの工務店だけになり、多くの工務店は淘汰されるのではないかと危惧します。


消費者の皆様には、きちんとした工務店を選び、きちんと「資産」として評価される家を安く手に入れていただきたいものです。