「戻し税」と消費税


昨日、菅総理は、民主党マニフェスト発表会で、消費税の増税に踏み込みました。「今年度内、2010年度内に、そのあるべき税率や、あるいは逆進性対策を含む、この消費税に関する改革案をとりまとめていきたい」。当面の税率については、「10%を1つの参考とさせて頂きたい」と明言しました。

注目すべきは、「逆進性対策」という部分です。今回のブログでは、逆進性対策として「戻し税」「給付付き税額控除」について書きたいと思います。


◇「逆進性」とは?

「逆進性」とは、累進性の逆という意味です。つまり、所得が増えることに比例して、負担の割合が少なくなっていくという意味です。

所得税の場合には、累進制度が取られているので、所得が増えるに従ってかけられる税率が増えていきます。それは、所得が増えるほど、負担能力が上がるので、税率を累進にすることが公平だと考えられるからです。


一方、消費税は、税率が一定なので、低所得者層にとっては、所得税に比べて負担が重いということになります。「消費税増税には、逆進性がある」というのは、以上のような意味です。


そこで、「食糧費には低率の消費税率にすべき」という主張もなされています。これに対して、私は「戻し税」を主張しています。


◇「戻し税」とは?

まず、人間が一人生きていれば、一年間で最低いくら消費するのかということを考えます。例えば、所得税基礎控除額が38万円なので、仮に(計算を簡単にするため)40万円とします。

この基礎額(40万円)×家族の人数×消費税増税分をキャッシュバックするという仕組みを作るのが、「戻し税」の考え方です。

つまり、仮に4人家族で、消費税を5%から10%に増税するとすると、40万円×4人×(10%−5%)=8万円をキャッシュバックするということです。


40万円×(10%−5%)は2万円ですので、1億2500万人では総額2兆5000億円になります。消費税を1%上げた時の増税額が約2兆5000億円円なので、5%では約12兆5000億円。つまり、戻し税として2兆5000億円分キャッシュバックしても、国としては税収が10兆円増えることになります。


食料品などに低率の消費税率をかけるなると、事務が膨大になります。また、食料品を作るコストには、包装費・光熱水費等も入っていて、それらは通常の税率でかけられるので、計算が非常に難しくなります。食料品のうち贅沢品には通常の税率をかける場合には、より複雑になります。

戻し税では、一律にキャッシュバックするので事務量も抑えられますし、より公平になります。


◇「給付付き税額控除」とは?

民主党が主張している「給付付き税額控除」は、戻し税の考え方を所得税の控除に適用するものです。

現行制度では、所得控除のしくみが取られています。所得控除では、高額所得者層ほど、控除分に適用される税率が高いのでメリットが大きいことになります。そこで、一律に税額を控除すべきという考え方が出てきます。これが「税額控除」という考え方です。

しかし、その時、低所得者層は基礎控除や扶養控除などだけでも課税所得がゼロということがあります。そうすると、税額控除を政策的にとっても、低所得者層にはメリットがないということになります。そこで、控除されない部分を「給付」するというのが、「給付付き」という意味です。

例えば、税額控除を15万円とします。税額控除前の所得税額が10万円だとすると、10万円の納税が無くなるだけでなく、さらに5万円の給付が受けられるということです。



皆さんは、「逆進性対策」について、どのようにお考えでしょうか?