定置型大規模蓄電システム 〜 再生可能エネルギー普及の鍵

(記2011/07/17)

7月15日(金)の蓄電議連で、東京大学生産技術研究所の堀江英明(ほりえ・ひであき)教授から、リチウムイオン電池のことを教えていただきました。先生は長らく自動車メーカー(日産自動車)で電気自動車の開発に当たって来られました。

自然エネルギー再生可能エネルギー)の普及には需要を均す定置型(大型)の電池が必要だと考え、転身されたということです。

確かに、再生可能エネルギーは、風力にしても太陽光にしても、自然条件に左右され、なかなか「安定電源」になりえません。しかし、発電量の上下を均すことができる大規模な発電システムがあれば、再生可能エネルギーが「安定電源」になり、将来は「廃棄物がでないエネルギーシステム」が当たり前になります。


リチウムイオン電池のすばらしいところは正極と負極をリチウムイオンが移動することにより電荷を運ぶということ。つまり、従来の電池のように精度の高いメタルが必要になりません。コスト的にも資源的にも未来に開かれた技術、と堀江英明教授は仰います。


100万kWの発電所のピークカットのために8hの充電ができる蓄電池だとすると約1000万kWh=10GWh=100億Whの蓄電能力が必要です。1Wh当たり30円程度として3000億円。

堀江英明先生は、そのための工場は1000億円程度で建築できるのではないかと試算しています。こういう部分にこそ、国家として投資すべきです。


定置型蓄電池の良いところは大きさをある程度許容できるので、蓄電能力を低く抑えて寿命を延ばせるような設計を可能にできるところです。20年の寿命であるとしても一年当たり150億〜300億円/原発1機分(100万kW)の費用で済む。装置産業なのでどんどんコストダウンも進みます。

量産効果が上がれば、原発1機分の蓄電電池は2000億円程度までは引き下げができるようです。


このような技術を持っている国内企業「エナックス」に、日本の国家ファンドである「産業革新機構」が投資をしています。
http://www.incj.co.jp/investment/deal_010.html

政権交代後の話なので、「やはり民主党政権になって良かったこともあるなあ」と手前味噌な気分にもなりますが、残念なことに投資額は38億円ほどであり、必要な額にはまだまだ届かないと思います。

こういう事業にこそ、「株式」を発行して「巨額の資金を集めて投資する」という機能を持つ「株式会社」の存在価値があると思うのですが、なかなか資金が集まらないというのも残念なことです。


先のブログで、岩本沙弓さんの「為替占領」を紹介いたしましたが、その本意は、日本は財政危機でも何でもなく、将来への投資のために今は財政出動をすべきということを申し上げたかったからです。

こういう技術は、国家こそ戦略的に「国家ファンド」を使って投資すべき案件です。資金調達は、赤字国債を使って行う。エネルギーの自給ができれば、日本という国は怖いものがなくなるのですから、国家の安全保障という意味でも重要です。

国家の全体像を考えれば、当たり前の「投資」だと思うのですが、経済界からの投資が入らないのはなぜなのでしょうね。