国債を発行すると相当額の預金が増えるのはなぜか

(追記 2012/10/01 レジュメを作りました。)
【まずはこのレジュメをDLしてください↓】
http://firestorage.jp/download/f1107e3e726073c6f8af022010c419169527f588

私は、デフレ下での経済対策としては、積極的に国債を発行するしかないと主張しています。これに対して、国債を発行し続けると預金がそれほど増えていないので、いつかは限界が来る」と批判なさる方がいらっしゃいます。

今日の「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会」での安住財相の答弁も上の理解の下で、私に反論をされました。(追記2012/08/07 未定稿が上がってきましたので、下のページに載せました。追記2 2020/11/20なぜか未定稿が消えているようです。確定稿を載せます。)
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=118014401X01320120803&spkNum=15

しかし、その点は、以下の論理(ロジック)で、「政府が国債を発行すると、それに相当する預金が民間部門(企業・家計)に増える」=「通貨供給量が増える」ことを説明し、反論しています。

この点については、昨日、財務省の課長さんと2時間議論をしました。彼も、にわかには私の論理を否定できなかったため、機会をあらためて意見を伺いたいと思います。


(1)政府が国債を銀行に売ります。金融緩和がされている現状では、日銀にある銀行の当座預金口座に預金が十分に積まれています。そうすると、日銀の銀行の当座預金口座から政府口座に、国債発行額相当が振り替えられることになります。
銀行のバランスシートでは、資産の部の当座預金国債に置き換わります。政府のバランスシートでは、資産の部に当座預金が増え、負債の部に国債発行額が債務として現れます。


(2)政府は得た通貨(円貨)で政府支出を行います。具体的には、日銀にある政府口座(当座預金口座)から振替をするか現金を引き出して支出に充てることになります。
その支出により、民間部門(企業・家計)に通貨が移転します。大方の場合には、これも口座振り込みで行われるので、瞬時に銀行へ預金が戻ることになります。
ここで、民間部門(企業・家計)のバランスシートでは、資産の部分に預金が入ります。銀行には、預金が入る分、資産の部分の当座預金が回復し、負債の部分に預け入れられた分の預金が計上されることになります。


(3)以上をまとめると、銀行には資産の部に国債が入り、負債の部に相当額の預金が入ります。政府は、国債の分だけ債務が増えます。民間部門は、政府が債務を増やした分だけ、預金(ないしは現金)を得ることになります。

このようなプロセスを通じて、金融緩和により銀行(の当座預金口座in日銀)に積まれた通貨(=現金+預金)は、民間部門に出てきます(=市中に出てきます)。


(1)から(3)のプロセスを見れば、国債の発行分の預金が民間部門に増えているので、「国債を発行すれば、預金がその分なくなる」という主張が正しくないと分かるでしょう。

もちろん、その後、民間部門が国債を銀行から買えば、銀行の資産の部にある国債が民間部門に移るとともに、相当額の預金が消える(銀行の相当額の債務が消える)ことになります。(この場合、民間部門の金融資産の総額は変わらないことになります。∵ 預金が国債に替わるだけなので。)


この循環が途切れてしまうのは、国債を外貨で発行するような時です。この場合には、その国の対外資産負債の額、経常収支、外貨準備高などが極めて重要になります。ただ、今の日本の国債は、自国通貨(円)で発行しているので、関係ないのです。