「信用創造」>>通貨は銀行が発行する

質問(190文字)

中村さん、お金=貨幣=通貨=現金+預金だという定義は分かりました。ただ、よく「信用創造」という言葉を聞きます。私たちの手元にある「お金」は、「日本銀行券」と書いています。現金と言えば、日本銀行が刷って配るものでしょう? でも、この「信用創造」では、どうも一般の商業銀行が預金、つまりお金を発行できるということなのですね。ここが理解できません。平たく言えばどういうことなのでしょうか。

回答(754文字)
例えば、銀行が100万円の貸し出し(融資)をするとき、銀行は借りる人がその銀行に開いている口座に100万円という数字を書き込みます。ただ、それだけです。単なる数字なのですが、それが「預金」となります。借りる人はその口座に書き込まれた数字=預金を引き出して「現金」を手に入れることもできますし、銀行振り込みで支払をすることもできます。つまり、銀行は貸し出しの瞬間には貸し出し分の現金を余分に持っていなくてもお金を貸し付けることができます。
これを銀行の貸借対照表で見てみましょう。貸し出しの瞬間に、資産に貸金債権100万円分が増えます。負債に預金100万円が増えます。一方、借りる人の側で見てみましょう。借りた瞬間に、資産に預金100万円が増えます。負債に借入債務100万円分が増えます。このように、貸借対照表バランスシート)を見ると、資産と負債がバランスしていることが分かります。
このように100万円の貸し出しが行われる前と後を比べると、貸し出しで、この世に新しく「預金」100万円が生まれていることが分かります。それゆえ「信用創造」では、作り出すという意味の「創造」という言葉が使われています。
このように、一般の銀行が貸し出しをすると、この世でのお金の総量が、その分だけ増えるということになります。正確にいえば、円という通貨圏の中での通貨円の総量が、融資の分だけ増えるということです。逆に言えば、銀行が貸し出し(融資)をしない限り、一般の民間企業や個人が持つお金の総量は増えないということになります。
今の日本は、不況のために収益率が低い民間企業には銀行はお金を貸せなくなってきています。お金を貸さないということは、通貨の発行量が少なくなるということです。だから、さらにデフレを進行させていくというメカニズムになっていることが分かりますね。