1:「通貨」の定義

(2013/09/03「中村てつじメールニュース」)
以下は、私が不定期に発行している「中村てつじメールニュース」の今日のメールです。
バックナンバーとしてブログに転載いたします。

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昨日のメールでは消費税増税と通貨の関係について概説を述べました。
今日から「通貨のひみつ」シリーズを始めます。
書き始めると長くなってしまったので、5回に分けて説明をする予定です。


さて、「てつじさん、デフレで世の中に出回るお金が少ないのだったら、お金は政府が刷ってばらまけばいいのではないのですか?」という質問をいただきます。

実は、その通りなのです。ただ、お金を刷る権限は日銀に集中しています。厳密には日銀が刷ったお金を銀行を通して政府が借りるというのが正確な表現となります。

お金は人間が生きていくのに不可欠なものなのですが、実際のところは、お金とは何かということについて、あまりよく知られていません。

少し前には週刊誌などで「政府通貨」なるものが話題になりましたが、その内容についても一般向けに説明されているものはほとんどありませんでした。

そこで「お金とは何なのか」について、丁寧に分かり易く書いていこうと思います。ただ、あまり長いと読む気が失せますので、1つのメールはできるだけ1テーマに絞って短くしたいと思います。


今回のテーマは、お金=通貨の基本である「信用創造」と言われるものを理解していただくための説明、第一回です。

信用創造」を広辞苑で引くと「預金・貸付の繰返しによって、銀行機構全体として預金の何倍かの貸付を行うこと。通常は貸付が預金設定の形で行われることから預金創造ともいう。」と書いてあります。

一読して、内容を理解された方はいらっしゃるでしょうか。

私は、理解された方は、既に信用創造について知っておられる方だと思います。それぐらい、短い説明では説明しづらいものだということでしょう。


私が短く説明するとすれば、「日銀から提供されたお金を元手にして、その何倍ものお金を商業銀行が発行して、民間の企業や個人にお金を提供すること」と説明します。

と、このように説明したとしても、「えっ?お金っていうものは、日本銀行しか発行できないのではないの?ふつうの銀行が勝手にお金を発行できるんだったら、銀行は濡れ手に粟のビジネスをしているってことでしょう?何かその説明はおかしいよ。」と思われることでしょう。

そこで、そもそも「お金」とは、どのように定義されるのか、というところから考えて行きましょう。


先ほども書きましたが、お金は、難しい言葉では「通貨」と呼ばれています。経済学の用語では「貨幣」と呼ばれていますが、統計上「貨幣」は硬貨(コイン)のこととされていますので、このメールではお金のことを「通貨」と呼び方を統一します。

通貨とは何かという定義を調べると、

通貨=現金+預金

と定義されています。(岩田規久男「デフレと超円高」p.118参照。ちなみに、岩田規久男さんは今の日銀の副総裁です。私とは少し立場は違いますが定義の部分は共通なのであえて立場の違う人の本を出典としています。)

それでは、通貨の機能とは何でしょうか。

一般には「決済の手段」とされます。

私が一杯700円のラーメンを食べたとします。
カードで払えるところもあるでしょうが普通は1000円札を渡してお釣りをもらうか、500円玉と100円玉2枚を渡して代金を支払います。
ここでは「現金」が決済の手段です。

またネットでパソコンを買ったとします。
パソコン代5万円を銀行振り込みで払う場合、口座にある預金5万円を振り込むことで代金を支払います。
ここでは、「預金」が決済の手段です。

つまり、この二つの例で見られるように、現金も預金も、決済の手段として機能しています。だから、「お金」=「通貨」は、現金+預金と定義されるのです。


本当ならば、もう少し続きの内容を書きたいのですが、長くなると読みたくなくなるでしょうから、今日のメールはここまでにします。次号は、世の中に出回るお金を増やす方法の1つ目、融資=貸付について説明をいたします。

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