アメリカ財政赤字問題(「国債のひみつ」1)

(2013/10/12「中村てつじメールニュース」バックナンバー)

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 「てつじさん、アメリカが世界恐慌の引き金を引くかもしれないって、どういうことですか?」という質問をいただきました。

 「アメリカ政府が米国債を返せなくなる可能性が出てきたということです。この「返せないこと」を債務不履行とか、デフォルトとか、償還ができなくなると言います。米国債債務不履行が本当に起こると、世界のお金の流れがいたるところで止まり、世界経済がストップするという話になります。」と答えています。

 米国債はたくさんの国で持たれていて、債務不履行となると米国債の時価は一時的にでも暴落します。米国債を持っている金融機関は、自分の資産を時価で評価すると目減りさせてしまうことになります。そうすると、例えば、預金者から預金の払い戻しができなくなるのではないかと思われてしまい、取り付け騒ぎにさらされるということにもなりかねません。
 このような形で連鎖的に民間の金融分野でも債務不履行が引き起こされ、お金の流れがいたるところで止まることになります。単なる「不況」ということではなく「恐慌」というレベルになるということは、ありえないことではありません。

 しかし、さすがに本当に米国債債務不履行に追い込んでしまうと、その責任は、引き金を引いたアメリカの共和党が一身に負わなければならなくなります。アメリカ共和党は、向こう何百年も「世界経済を混乱に導いた悪い政党」というレッテルを貼られ、世界中の世界史の教科書に書かれることになります。
 どう考えても、「オバマケア」をめぐる政争の具になっているだけで、最後にアメリカ共和党は折れざるをえなくなります。


 9月初めに「通貨のひみつ」を書いて、次のシリーズの「国債のひみつ」は未だ書けないでいました。アメリカ財政赤字問題が起こっている今の機会に伝えないといけないと思いました。
 今回のアメリカ財政赤字問題は、他の国で起こってきた今までの財政危機問題とは質の違う問題です。他の国で起こってきた財政危機は、国債を償還するための外貨が用意できなかったということが原因です。
 しかし、今回のアメリカの問題は自国通貨建ての国債がなぜ償還できないのかという話です。お金が足りないのであれば、新しい国債を発行して市場からお金を集めて古い国債の償還の財源にすればいいだけです。
 本当に米国債債務不履行ということになってしまうと、「解決策が明確にあるにもかかわらず、アメリカ国内の政治的対立でその解決策をとれなかった」と「アメリカ政治の無能さ」を世界に晒すことになります。
 そんなことになってしまえば、世界の民主主義の先導者を自称し、世界の政治はアメリカが引っ張っていると考えているアメリカ合衆国民は、共和党を許さなくなるでしょう。

ちょうど、ブルームバーグが社説を書いていますので、紹介いたします。
「米債務上限の引き上げ拒否が起こす5つの惨事−社説」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131008-00000016-bloom_cn-bus_all

 今回の問題は、アメリカ共和党が「オバマケア」をつぶすために、財政を人質にとってギリギリまでしかけていることです。アメリカの共和党が「これ以上、国債を発行してはいけない」と言い出して、政府の債務上限を引き上げないと突っ張っているのは、政治的なパフォーマンスにすぎないのですから、早く解決してもらいたいものです。

今号から始めます国債のひみつ」シリーズでは、国債の持っている機能について説明をいたします。明日発行する次号ではそもそも国債とはどういうものなのか」についてお伝えをいたします。

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【告知1】
11月2日(土)に京都で岩本沙弓さんと堀茂樹さんの講演会が行われます。テーマは「「現代を考える」第一回テーマ:消費税をめぐって」です。私も一参加者として参加いたします。(参加費1500円)
http://oikos2013.blog.fc2.com/
お申し込みは、「お芳名・ご住所・連絡可能な電話番号を明記の上、jaquie@live.jp 森田友企子までメールにてお申し込み下さい。受付完了の方には、折り返しご連絡させて頂きます。」とのことです。

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【告知2】
10月29日(火)15時から大阪で稲盛和夫さんの講演会が行われます。テーマは「人は何のために生きるのか」です。私も一参加者として参加いたします。(参加費無料・事前申し込み必要)
http://www.seiwa-osaka.gr.jp/
13時に受け付けが開始されるということで先着順に席が用意されます。私も13時には会場に参るつもりです。お申し込みは登録フォームからしていただけます。
http://www.seiwa-osaka.gr.jp/

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