国債とは何か(「国債のひみつ」2)

(2013/10/13「中村てつじメールニュース」バックナンバー)

                      • -

 先日、「通貨のひみつ」の内容について、証券会社にお勤めの方から感想をいただきました。国債というのはお金みたいなものなのですね。」
 そうなんです。

 あわせて「でも、銀行員でもそんなことは分かっていないのではないですか」という御質問も。
 たぶん、そうなんです。

 以前、銀行の営業を担当している人にうかがいいました。「そういう銀行の資金繰りについては、銀行の「財務」という部署が担っています。私のような営業にはそういうことは分からないのです」という御回答でした。
 ドラマ「半沢直樹」を見ても、銀行の資金繰りを担当している部署は陰も形も出てきませんよね。それだけ、銀行の財務部門というのは地味なのでしょう。

国債とは、マスコミがよく使う「国の借金」という言葉よりは、
「政府が発行する通貨代替物」と表現する方が正確です。

お金そのものではないんだけど、お金に代わるものというイメージです。
もし、国債というものが存在しなければ、日本銀行も金融政策ができません。

日本銀行の金融政策は、
国債を銀行に売ったり買ったりすること
国債を担保にしてお金を銀行に貸すこと
が中心です。

日本国政府が発行する「国債」=通貨代替物があるからこそ、日本銀行は一般の銀行に供給する「通貨」の量をコントロールすることができるわけです。

 ちょっと難しいですね。
具体的に説明します。

国債の性質の中で、何の性質が「代替物」の機能を果たしているのか、という点がポイントです。ここでは、銀行を例にして、国債と通貨の関係を考えてみましょう。

通貨の定義は、現金+預金でした。(「通貨のひみつ」シリーズ参照)

銀行が持っている現金は、紙幣と硬貨です。ともに利息は付きません。
銀行が持っている預金は、日本銀行当座預金です。(日銀当預)

日銀当預には、法定準備率を超えた部分について、金利がつくようになりました。現在は、0.1%です。

(ちなみに、私たちが銀行に預けたら5年定期でも0.06%ぐらいです。銀行が日銀に当座預金で預けると0.1%も金利がつくのですから、銀行は良い商売ですね。)

基本的に、銀行がお金を持っていたとしても、それだけでは金利が全くつかないか、ついても日銀当預の0.1%ということになります。

「そうすると、毎日引き出せる日銀当預のメリットも捨てがたいけれど、少々リスクがあっても金利がより高いものがあれば、そちらに投資したい」ということになります。

でも、投資しても、すぐに現金化できることも重要です。
だから、現金に似た機能を持つ、金利がついている債券が必要になります。

これが、国債です。

国債は、有期、固定金利という点がポイントです。

額面の金利は、償還期まで変わりません。
(例外的に変動金利国債もありますが、流通量は多くありません。)

国債市場の金利は変動します。毎日毎日、動くわけです。

額面金利よりも市場金利が上がっている場合には、国債の額面額から金利差分を差し引いて取り引きされることになります。

これが、国債の価格が下がるという現象です。

額面金利よりも市場金利が下がっている場合には、国債の額面額に金利差分を上乗せして取り引きされることになります。

これが、国債の価格が上がるという現象です。

このように、国債と通貨を比べると、

通貨は、価値そのもので、基本的には金利はつかないし名目額に変動はない。
国債は、その時価は市場金利によって変動する。

という違いがあると分かります。


この違いを利用して、日本銀行は金融政策を行います。

市場金利を下げたい場合は、金融緩和を行います。具体的には、国債の買い取りをします。国債の買い取りをすれば、国債の価格が上がる方向になります。その結果、金利は下がります。これが、金融緩和という金融政策です。

市場金利を上げたい場合には、金融引き締めを行います。具体的には日銀が持っている国債を売却します。


このように、国債は「国の借金」と表現するよりは、「政府が発行する通貨代替物」と表現する方が、国債というものの性質を端的に表します。

次回以降は、9月12日号のメールニュースでお伝えした、
国債と通貨建ての関係〜ギリシャ国債はなぜ暴落したのか?
国債売買と日銀当預との関係(銀行にとって国債は通貨に準ずるもの)
・日銀当預に付与される金利当座預金なのに利息が付くしくみ
などについて順に説明して参ります。

                      • -

【告知1】11月2日(土)に京都で岩本沙弓さんと堀茂樹さんの講演会が行われます。テーマは「「現代を考える」第一回テーマ:消費税をめぐって」です。私も一参加者として参加いたします。(参加費1500円)
http://oikos2013.blog.fc2.com/
お申し込みは、「お芳名・ご住所・連絡可能な電話番号を明記の上、jaquie@live.jp森田友企子までメールにてお申し込み下さい。受付完了の方には、折り返しご連絡させて頂きます。」とのことです。

                      • -

【告知2】10月29日(火)15時から大阪で稲盛和夫さんの講演会が行われます。テーマは「人は何のために生きるのか」です。私も一参加者として参加いたします。(参加費無料・事前申し込み必要)
http://www.seiwa-osaka.gr.jp/
13時に受け付けが開始されるということで先着順に席が用意されます。
私も13時には会場に参るつもりです。お申し込みは登録フォームからしていただけます。
http://www.seiwa-osaka.gr.jp/

                      • -

以上のような記事を皆さまにお届けする「中村てつじメールニュース」。登録はこちらから> http://tezj.jp/mailnews/