アメリカ金融緩和縮小 〜日本との違い〜

(2013/12/21「中村てつじメールニュース」バックナンバー)

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このメールは「中村てつじメールニュース」です。
ちょっと配信が滞っていました。すみません。

当初、今月1日から配布をしている「日本再構築ビラ」57号の内容をお送りする予定だったのですが、ビラの内容に入る前には、アメリカのFRBが金融緩和の縮小を発表した件について触れなければなりません。その件について書いておりましたらちょっと長くなりましたので1本の独立したメールニュースにさせていただきます。

アメリカの金融緩和縮小については、ぐっちーさんこと、山口正洋さんがメルマガで予言された通りになりました。ぐっちーさん、お見事です。

ちなみに、金融緩和の縮小と言っても金融緩和をやめるわけはなく緩和のペースを縮小するという意味なので、お間違えなく。

しかし、金融緩和の縮小という意味では間違いなく、それに吊られて、円が安くなっています。金利差が広がるからということです。

私の周辺の経済専門家も、しばらくは円安基調ではないかと仰っています。
ただ、投資指南ではないですので投資は自己責任でお願いいたします。

この年末の円安基調で、今年末の対外純資産額は更に拡大するでしょうね。
来年5月下旬の発表が楽しみです。

何回も申していることですが、日本とアメリカの金融緩和の効果が違っていることはなぜなのかについて、あらためて触れておきます。

【アメリカの銀行】
1.リーマンショックで痛手
2.MBS市場がある(MBS=不動産に対する融資を証券化した金融商品
3.銀行のMBSを米国中央銀行FRB)が買い取る
→銀行のバランスシートから不動産投資が切り離される
→融資余力が生まれる
→新規融資
→住宅市場の回復
→経済の回復

【日本の銀行】
1.リーマンショックの影響は比較的少ない
2.MBS市場は住宅金融支援機構の「フラット35」ぐらいのもの
3.日本銀行MBSを買おうとしてもモノがない
3’.日本の銀行も収益の高い住宅ローンは手放さない
→金融緩和の方法として日銀はFRBのような方法を採れない
→日銀ができるのは国債の買い切りぐらい

という違いがあります。

日本はバブルの傷跡から回復していません。空家が増えてきていますが、かつてサラリーマンだった定年後の人たちは高い値段で買った土地を手放さない。高齢者の死後も、相続した子どもたちは遠隔地に住み、処分をしないまま手放さない。

ということで、住宅地は流動化しません。若い世代はグローバル競争で給料が安くなっているのに土地が流動化していないので新しい造成地の割高の住宅を買わざるをえない。

これに対してアメリカは中古住宅市場が整備されていて、住宅が素早く現金化できる市場になっています。初めて買う住宅が中古住宅という若い人が多い。

この辺りがアメリカとの違いです。このようにリアルな資産とバーチャルな金融資産をつなぐしくみがあるアメリカと、そのようなしくみがない日本と、金融緩和政策にしても、取り得る選択肢が違ってくるのです。

私が黒田「異次元緩和」に懐疑的なのも、この点です。

じっさい、統計をみれば、日銀が猛烈な勢いでマネタリーベースを増やしても、民間に流通する通貨の量、マネーストックは増えていません。

参照:マネタリーベース統計
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/
2013年11月時点
総額191兆6182億円
(内訳)
紙幣84兆6465億円
コイン4兆5856億円
日銀当座預金102兆3861億円
(3月末は47兆3674億円、55兆円増)

参照:マネーストック統計
http://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/
2013年11月時点
M2:854兆8000億円
(3月末は833兆6000億円、21兆円増)

黒田総裁が4月に日銀総裁になられて「異次元緩和」を始められました。この8ヶ月で、日銀当座預金の額は55兆円も増えているのに、経済学上はその数倍の信用創造があるはずのマネーストックは21兆円しか増えていません。

どういうことでしょうか。日銀から銀行にいくらお金を渡しても、銀行は融資を増やせていないという現実が見て取れます。新規国債の発行+政府支出でマネーストックは増えますので、21兆円のうち、相当部分が政府支出によるものだと理解できます。

いま、銀行は日本国債保有量を減らしていますが、それは猛烈な勢いで日銀が買っているからです。いま銀行が日本銀行国債を売ってそのまま日銀当座預金にお金を預けると、当座預金なのに0.1%の金利が付きます。

そら、もうかりますわな。
銀行は、国債を日銀に売りますわな。

預金者からは5年定期で0.06%(年利)
そのまま日銀に預けると超短期なのに高金利0.1%(年利)
見方によってはぼろい商売です。

こういう数字を見ていると、今年の「アベノミクス」成功は、金融緩和ではなくて財政出動だったことが見えてきます。さて、来年はどのように私たち国民は対応しなくてはならないのでしょうか。

ビラの内容に続きます。

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