第10回「銀行は手元にあるお金を貸すんじゃない」

(前回第9回「銀行のバランスシート」 http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140622 のつづき)


てつ夫:さと子ちゃん、もう一回、図の方に戻ってみよか。さと子ちゃんがお金を借りたら、さと子ちゃんの方には、お金が入ってくる。しかし、そのお金がどこに入るかっちゅうたら、さと子ちゃんの通帳に100万円という金額が増えるだけなんや。
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銀行にとって、さと子ちゃんからもらっている借金の証文、借用書が資産になるわけや。そうすると、何か気がつくやろ。

その瞬間、銀行はさと子ちゃんに対して、自分の手元にあるお金を渡しているわけじゃないのは分かる?

さと子:あっ、そうや。通帳に100万円って書いているだけやわ。

てつ夫:そうや。通帳に100万円って書くということが、銀行がお金を貸すっていうことやねん。

その瞬間には、未だ、銀行からお金は動いてないやろ?

さと子:うん。

てつ夫:だから、お金を貸すっちゅうのは、銀行にとっては預金を創り出すっちゅうことやねん。だから、これを「信用創造」って言っているわけやな。「預金創造」という言葉も使われる。

さと子:へえ、そんなんやったら、銀行はいくらでもお金を創れるっていうことになるやん。そんなん、常識的に考えておかしいわ。

てつ夫:でもな、さと子ちゃん。さと子ちゃんにお金を貸した瞬間、つまり、銀行がさと子ちゃんの通帳に100万円って書いた瞬間、さと子ちゃん、次、どのようなことができる?

さと子:そやね。100万円って通帳に書いてもらったと言うことは、それは私にとってお金やから、今度のデートの時に買っていくためのお金を引き出したり、銀行振り込みでお金送ったりできるな。

てつ夫:そうやろ。100万円を引き出されたら、銀行は手元の現金100万円がなくなる。また、100万円他の銀行に送金されてしまったら、100万円、日本銀行に預けているお金をその他の銀行に振り替えてもらうことになる。つまり、日本銀行に自分が預けているお金が100万円分減ることになる。

どっちにしても、銀行にとって、お金がその時点で流れるということになるわけやな。お金の代わりに銀行の手元に残るんは何や?

さと子:何やろう… あっ、そうか。銀行は私からの借用書が手元に残るんか。

てつ夫:そうや。ちゃんとさと子ちゃんが100万円を返してくれたら、その借用書には100万円の価値があるっちゅうことやけど、さと子ちゃんが返さんかったらその100万円の借用書というのはどれぐらいの価値持つ?

さと子:いくら返すかにもよるけど、全く返さんかったら極端な話、ゼロになるわな。

てつ夫:そやろ。そんだけ、資産が減っちゃうってことやろ。だから、簡単には銀行はお金を貸されへんねん。


(次回第11回「銀行にお金を返さないこと、返すこと」http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140720につづく)


追記【さと子の質問シリーズバックナンバー】
第1回・第2回「国債って何なん?」
(第1回「債券って何?」)
(第2回「国債の値段が上がったり下がったりって?」)
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140529
第3回「お金って何?」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140602
第4回「お金とは支払いの手段」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140603
第5回「銀行の銀行」日本銀行
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140606
第6回「銀行にとって預金は資産か借金か?」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140618
第7回「ふつうの銀行がお金を発行!?」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140619
第8回「資産と負債のバランス」(バランスシート)
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140621
第9回「銀行のバランスシート」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140622
第10回「銀行は手元にあるお金を貸すんじゃない」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140719
第11回「銀行にお金を返さないこと、返すこと」
http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20140720