「戦争法案」って何?

ツイッターやメールニュースで書いていることですが、あらためてブログでも書いておきます。

2週間前の「話す会」はテーマが安保法制だったからか、多くの人に来ていただきました。政府は「平和安全法案」と呼び、反対派は「戦争法案」と呼んでいる法案だけに、論点がどこにあるのか、知りたい方が多かったように思います。

マスコミの報道を見ると、新3要件により「武力行使」ができる範囲が拡大することばかり注目されていますが、最大のポイントは周辺事態法の改正により後方支援ができるケースが拡大することです。

分かりにくい話で恐縮ですが、国際法での「武力行使」に比べて日本国政府が従来から憲法9条で許されないと言ってきた「武力行使」の範囲は意図的に狭く解釈されてきました。つまり、国際法上の「武力行使」に当たるものでも従来から政府は9条に反しないとして行ってきました。それが後方支援です。

参考資料として紹介します。

国際法及び憲法第9条における武力行使」松山健二(国立国会図書館
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/pdf/070804.pdf

そこでまとめられているように、国際法の議論では、

武力行使には、
1.極めて重大な形態のものである武力攻撃
2.より軽い形態のものである武力攻撃に至らない武力行使
がある。

「武器の提供、兵站又はその他の支援」はすべてではないが、
国際法の一般的な解釈では武力行使に含まれる。

ということになっています。しかし、従来からの政府解釈では「武力行使との一体化」という日本国内でのみ通用する概念を生み出して、合憲の範囲を拡大してきました。

今回の安保法制法案でも、この点は変更されず維持されています。

 今回の法案で特に問題なのは、周辺事態法を改正して、後方支援といわれる「武器の提供、兵站又はその他の支援」が国際法上は「武力行使」とされているのに、世界中どこででもできるようにするという点です。

つまり、「重要影響事態」にさえ当たれば後方支援ができるようするわけですが、この後方支援は敵国から見れば国際法的には「武力行使」そのものです。

以上をまとめると一連の流れとしてはこうなります。

周辺事態法の改正=後方支援を世界中で行えるようになる
→後方支援=国際法上の「武力行使」を日本が行うケースが増
→敵国から見れば国際法上の「武力行使」を日本が行う
→敵国から見れば、日本は敵国になる
→日本が攻撃対象になる
→我が国に対する武力攻撃が発生
→「武力攻撃事態」そのものに該当
→日本の「個別的自衛権」の発動
→日本が戦争に参加、という流れになります。

この流れがあるということは、あまり報道されていませんね。

違憲かどうかという点ももちろん重要ですが、実際に戦争への入り口が拡大するという点は、より現実的な問題点として注目されてもいいのになあ、と思います。

先日、中国に最近長期滞在していた人に話を伺いました。「今まで日本が専守防衛と言って来て法律がそうなっていたから中国は先に手を出せない状態にあった。しかし今回の法制で日本が手を出してくるかも知れないから中国は自衛のために日本を攻めるという大義名分ができてしまうのが心配。専守防衛は中国に対する抑止力になっていたのに…」というお話でした。

安保法制の議論は難しくて、国会議員でもついていけない人も多いです。でも、少しずつでも国民の間で安全保障について会話がなされて情報が共有されるような社会になればいいなあ、と思います。