与党の「事前審査制」/「ねじれ国会」で必要


◇ 事前審査制

野田内閣が誕生し、法案・予算・条約については、与党民主党政調会長の事前了承が居るという方針となりました。与党が政府の方針に対して事前に審査を行い、了承を得なければ政府の方針を与党として認めないという体制を「事前審査制」と呼びます。

民主党は、政府与党一体化の中で、事前審査制を廃止するとマニフェストでも謳ってきた経緯があります。


自民党の批判・公明党の評価

この点について自民党は「民主党自民党の事前審査を批判していたのに、なぜ復活したのだ。おかしいではないか」と批判しています。ただ、公明党は逆で、「今まで3党で交渉しても、本当の窓口がどこにあるのか分からなかった。これからは状況が改善されると思う」と評価しています(9月4日(日)のテレビ討論番組にて)。

なぜ、このように評価が二分されるのでしょうか。


憲法が想定する「2つの国会」

実は、日本国憲法は2種類の統治態勢を規定しています。言わば「2つの国会」です。1つは衆議院参議院とも与党が多数のケース。この場合は官邸が主導して政策をスピーディーに進めることができるようになっています。事前審査制は必要ありません。

もう1つは参議院で野党が多数のケース。参議院で野党が多数の場合は、与野党で合意しなければ法案は通らなくなります。つまり、政治的主導権が官邸から国会に移ります。野党との交渉窓口である与党は、政府から事前審査権を委譲されなければ、国会内での交渉ができなくなります。

自民党の議論はこの2つの国会形態を混同していて、公明党の議論はこの憲法の規定の趣旨をそのまま述べているということです。民主党も、菅政権の時代には、形式的なマニフェストの記述にこだわり、憲法の原則論に立ち返った対応をしていなかったという点で反省をしなくてはなりません。


族議員と与党

自民党民主党を批判するのは、痛いところを突かれたことを隠しているだけと私は見ています。自民党は衆参とも多数派の時から与党の事前審査制を引いていました。これにより、実質的権力が政府から党側に移り、職務権限のない族議員が実質的権力を行使し、利権政治の温床になりました。事前審査制は、「ねじれ」の時は必要、衆参とも与党多数の時は利権の温床(つまり不要)、ということを国民の常識にして行かなくてはなりませんね。