日本が作る新しい世界秩序

今年のコロナ禍で多くのことが変わりました。世界経済の構造も多くの人が実際の姿を知るようになりました。2020年は「アフターコロナ」元年として、人の記憶に残る年になりそうです。

今日は、日本の潜在力を活かせば、アフターコロナ時代に日本が新しい世界秩序を作ることができるという話をします。

これからの世界秩序で問題になりそうなのは、自由貿易体制のあり方です。自由貿易体制とは、各国が貿易に制限を設けないで、できるだけ関税もかけないで他の国と取引をすることを言います。

この考え方を自由主義と言います。
これに対して、他国との貿易を制限する考え方を保護主義と言います。

二つの世界大戦の結果、国と国が争わなくてもいいように自由貿易体制が整えられました。日本も自由貿易体制の中で利益を享受し、世界一の純債権国にまで上り詰めました。


この自由貿易の状況がコロナ禍で大きく変わるのでしょうか。大きくは変わらないでしょうし、また、変えるべきでもありません。でも、修正が必要だということも分かってきました。


保健分野に必要な衛生用品や医療用品の供給を他国に依存していると、いざというときに国民の命を守れなくなることが分かりました。

これからは、衛生用品や医療用品をできるだけ自給できるような体制を整えなければなりません。この範囲で自由貿易体制は保護主義の方向に修正する必要があります。


次に、この点で考えなければならないのは、現時点で衛生用品や医療用品を自給できない途上国に対して、先進国がどのような対応をすべきかということです。それに加えて、保健分野の人材の育成も急務です。


私の提案は、
・先進国が自国通貨建ての国債を発行して自国通貨を調達する。
・先進国は自国通貨を途上国に貸し付ける。
・条件は無担保無保証にする。
金利は低金利(現状でも低金利
・途上国は貸し付けを受けた先進国通貨を担保にして自国財政を拡大し、医療保健体制を人的にも物的にも整備する。
・途上国の徴税体制の整備や金融体制の整備にも先進国は別のスキームで無償資金協力により協力する。
(途上国が財政を拡大する際には、自国通貨を安定化させるため徴税や金融の体制整備が必要になります。汚職をなくす懲罰的なしくみも必要です。)
というスキームです。

他の先進国は後で付いて来させればいいので、日本から始めればいいのです。このスキームは従来の日本の途上国への援助の形を大きく変えます。政府貸付は、ODA(政府開発援助)の一部です。

現在のODA総額は以下のURLのようになっています。(外務省サイト)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/yosan.html

統計資料を見ていただくと、政府貸付の額は以下の通りです。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/100053711.pdf

2018年
貸出額 8,841億円
回収額 7,237億円
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差し引き 849億円

こんな額しか政府貸付の予算をつけていないなんて、もったいない話です。日本の円は強力です。世界で途上国を味方に付けるため、10倍ぐらいの政府貸出の額にすればいいのです。


日本が国債を発行して円貨を調達して途上国に貸し付けても、使われ方は2パターンしかありません。

・日本企業へ仕事が発注される→日本経済にプラスになる
・円貨を外貨準備として途上国が持ち、途上国が自国通貨建てで自国財政を拡大する→発行された円貨は使われず貯められるので円貨の価値は下がらない

どちらにしても日本経済にとって悪い要素はありません。

返済不能になりそうならば、会計制度と高等教育体制の整備に力を貸し、更に支援を行います。日本に国費留学生として招聘し、日本語を理解する高度人材を育て、本国に帰って活躍してもらうというプログラムも同時に導入します。

そのように考えると、貸出額を一気に10倍規模、8兆円程度にする必要があります。これからの毎年の回収額はそのままなので、一般会計予算を現状の500億円程度→8兆円程度に増額する必要があります。ただ、そのために国債を発行しても、国債の発行残高が増えるだけで何の問題も生じません。今までの財政運営との連続性を守るために一般会計に計上することには問題があると政府与党が思うのであれば、政府貸出に関する特別会計を一つ作れば解決します。
そして、その特別会計の決算には、参議院に特別に長期的な視点から監査を行う専門の機関を設け、不正が起こらない体制を整備します。


緊縮財政の考え方を取り払うだけで、日本は国際的にも大きな投資ができるようになります。アフターコロナ時代に、日本が新しい世界秩序を作ることに繋がります。国内経済の復活のためにも、積極的なODAが展開されるようになってほしいものです。


参考:ODAの予算について詳しい解説は、参議院の調査室が毎年出しています。

令和2年度政府開発援助(ODA)予算(参議院 牛上直行氏)
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2020pdf/20200207074.pdf