信用創造の第3の経路 外貨建て資産

経済を考える時には、日本銀行が生み出したお金が、どのようにして市中銀行によって膨らまされて民間に流通しているのかという「お金のしくみ」を知ることが大切です。

日本銀行生み出したお金のことを「マネタリーベース」と呼び、市中銀行によって膨らまされて民間に流通しているお金のことをマネーストックと呼びます。この二つの差、言い換えれば、市中銀行がお金の量を膨らませること信用創造と言います。

この信用創造について、従来から私は、2つの経路を説明してきました。

1.銀行の貸し出し
2.政府の国債発行+政府支出増
の2つです。

 

ただ、厳密に言えば第3の経路があります。備忘的にそのことを書きます。

それは、市中銀行が、円貨を発行して外貨や外貨建て資産を購入する場合です。

つまり、

3.外貨や外貨建て資産を銀行が購入する場合
です。

例えば、民間企業や民間人が持っている外貨や外貨建て資産を円と交換したり円建てで購入したりする場合は、

銀行の資産として、外貨や外貨建て資産が増え、
銀行の負債として、銀行預金が増えます。

この瞬間、マネーストックが増えます。
これが第3の経路です。

しかし、逆に、外貨建て資産を円建てで売ったり、
外貨を円貨に交換したりすると、逆の流れになるので、

銀行の資産として、外貨や外貨建て資産が減り、
銀行の負債として、銀行預金が減ります。

 

このように、結局、日本の銀行が外貨や外貨建ての資産を円貨で買っている場合にのみ、マネーストックが増え、その逆のことをすればマネーストックが減るので、結局、国内物価に影響を与えるような程度の変動にはならないと推測できます。

実際に、資金循環統計の「預金取扱機関」の「資産・対外証券投資」と「資産・その他対外債権債務」の合計は、おおよそ110兆円~130兆円の枠の中で増減しているだけです。
https://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/cgi-bin/famecgi2?cgi=$nme_a000&lstSelection=FF

以上のように、国内経済の変動を考える上では、信用創造の第3の経路は無視してもいい程度であると私は考えています。