政府通貨論について

通貨政策について「日銀券に代えて政府通貨を発行すれば国債を発行しなくても通貨の流通量が増える」という御指摘をいただきます。この議論については一見良さそうに思えますが、私としては全く理解できない要素があるので、一応まとめておこうと思います。


まず、「政府に紙幣の発行権はないけれども貨幣の発行権はあるので、一兆円金貨などを作って40枚発行すればいい」とおっしゃるような方がいらっしゃいます。

しかし、この立場の方に対しては「それならば、一兆円金貨はそのままでは流通できないため、どのような通貨に両替するのでしょうか」という疑問が生まれます。

つまり、日銀券と政府通貨の両替を如何にするのかという問題が生じます。特に、銀行が政府通貨を扱うのか、扱う場合にはそのファイナンスはどのようになっているのかということは非常に重要な課題となります。

現在の貨幣の発行と政府の債務の関係がどのようになっているのかについては、また調べてこのブログで書こうと思います。後日、ブログで追加の説明をいたしました。
(追記 2012/07/18 http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20120718


政府通貨が完全に日銀券と両替可能だということになれば、結局、日銀が一兆円金貨を購入して一兆円分の日銀券を市場に拠出することになります。それは、国が一兆円の国債を発行して日銀がそれを買い取ることと同じです。むしろ、(おそらく一兆円金貨には利息が付かないでしょうから)政府通貨の価値の裏付けがない以上、日銀のバランスシート自体が、客観的評価ができない政府通貨という不良資産に汚染されるという見方も可能となります。

そうすると、結局、日銀券の信用にかかわるようになります。

このように考えると、何もわざわざ政府通貨を発行して公共事業を行い通貨の流通量を増やさなくても、政府が国債を発行して円貨を調達し、内需拡大のために公共的な用途に使えば済むという話になります。

むしろ、今は、日銀が積極的に金融緩和を行っても、それに応じて政府が債務を増やすという積極財政の政策を取っていないため、通貨の供給量が増えないという現象が起こっています。

つまり、問題の所在は、通貨量そのものではなく、日本の国内需要内需)が不足しているということにあり、その解決策としてはオーソドックスな国債の発行+財政出動以上に有効な手段は見当たらないということです。


たびたび聞かれることですので、簡単にまとめておきました。
また、精度を上げた記述をするつもりです。
詳細については、以下のブログをご覧ください。
(追記 2012/07/18 http://d.hatena.ne.jp/NakamuraTetsuji/20120718