2:融資=貸付のしくみ(「信用創造」のしくみ(2))
(2013/09/04「中村てつじメールニュース」)
私が不定期に発行している「中村てつじメールニュース」の今日のメールです。
バックナンバーとしてブログに転載いたします。
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前号に引き続いて「通貨のひみつ」シリーズ、その2です。
前号では通貨とは何かという説明をいたしました。今号からは「どうやったら世の中に出回るお金=通貨を増やすことができるのか」というしくみについて説明をいたします。
ここで「信用創造」について前号で紹介した広辞苑の定義を復習しましょう。
「預金・貸付の繰返しによって、銀行機構全体として預金の何倍かの貸付を行うこと。通常は貸付が預金設定の形で行われることから預金創造ともいう。」でしたね。
はじめの「預金・貸付の繰返しによって」という部分から、何かよく分からない臭いがプンプンしています。
預金と貸付を繰り返す、ということはどういうことなんでしょうか。
あとの方で「通常は貸付が預金設定の形で行われることから」と書いてあるので、「預金設定」という言葉がキーワードのようです。
そこで、このメールでは広辞苑が言う「通常」の場合に、どのように「貸付」が行われているのか、というところから見ていくことにいたしましょう。
なお、「銀行が行う貸付」は銀行以外の主体が行う貸付とは経済における機能が異なります。
その理由は説明する中で明らかになって参りますので、ひとまずはそのことだけを押さえていただいて、このメールでは「銀行が行う貸付」のことを融資と呼び方を統一することにいたします。
例えば、中村商店がA銀行から100万円を借りるとします。
実は、融資をする瞬間には、A銀行は手元に100万円の現金がなくてもよいのです。A銀行が融資をするときにすることは、中村商店が持っているA銀行の通帳に100万円という数字を書き込むだけです。
これを「預金設定」と言います。
「えっ?銀行は民間にお金を貸すときに、自分の手元にその分の現金を用意しなくていいの?」という疑問をお持ちになるかも知れません。
びっくりされるかも知れませんが、これが「信用創造」の実態です。
会計的には、次のような説明になります。
私たち民間人や民間企業にとって、銀行に預けている預金は、現金と同じく「お金」ですので「資産」です。
それでは、銀行にとって預金とは、何でしょうか。
銀行にとって預金とは、預金者が引き出そうとすれば、通帳の残高の数字を減らす代わりに現金を渡さないといけないものです。
だから、銀行にとって預金は「負債」です。
つまり、預金通帳は、預金者にとっては資産を表示する財産、銀行にとっては負債を表示する借金の証文と同じことだと分かります。
この部分が、はじめての方には分かりにくい部分だと思います。でも、落ち着いて考えていただければ、その通りだと理解していただけると思います。
融資をした瞬間を見ましょう。A銀行には
負債:100万円の預金
資産:100万円分の貸金債権
また、中村商店には
負債:100万円分の借金債務
資産:100万円の預金
が生じます。
この結果、融資を行ったことにより、100万円の「預金」が新たに生まれたことになります。
前号により通貨は、
通貨=現金+預金
で定義されることを説明いたしました。
上の融資により100万円の預金が新たに生まれてということは、世の中に流通する通貨の量が100万円分だけ増えたということになります。
これが、「融資」という「銀行が行う貸付」の機能です。
通貨が創造されているので「信用創造」と呼びますし、
預金が創造されているので「預金創造」とも呼ぶわけです。
ここまでの説明で「それならば、銀行はもっとお金を貸せばいいじゃないか」と思われるかも知れません。ふつうに考えれば、その通りです。しかし、ことはそんなに簡単には行きません。
続けたいところですが、長くなったので続きは次号にいたします。
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